目次
巻頭のことば この息苦しさ――貧困と社会的偏見[松本伊智朗]
特別講演
貧困研究――進歩・問題・政策[デビッド・ピアショ]
特集1 貧困政策を検証する――生活困窮者自立支援と子どもの貧困対策に焦点をあてて
生活保護改革と生活困窮者自立支援法創設[布川日佐史]
生活困窮者支援制度における「総合相談」の意義と展開――地域における新しい「支え合い」の創造に向けて[岩間伸之]
子どもの貧困――奨学金問題の視点から[大内裕和]
特集2 家族・私的扶養・社会保障
〈自活、家族扶養、社会的扶養〉をめぐる理解とその変遷――家族制度との関係で[蓑輪明子]
扶養の権利義務の明確化と公的扶助制度との調整――ドイツ法の視点から[冷水登紀代]
離別した父親の扶養義務の履行確保について――日本とアメリカの養育費政策[下夷美幸]
生活保護における扶養調査の実際と課題[田川英信]
投稿論文
京都市における緊急一時宿泊事業利用者の実態[加美嘉史]
投稿研究ノート
生活保護受給者が利用する法定外施設の課題――届出/無届を規定する要因[後藤広史]
書評論文
阿部彩著『子どもの貧困Ⅱ――解決策を考える』[大澤真平]
国内貧困研究情報
貧困研究会第6回研究大会報告(2013年11月9日(土)~10日(日)於:日本福祉大学名古屋キャンパス)
〈分科会〉
「宿泊所をめぐる動向と課題」[村上英吾・松本一郎・後藤広史・山田壮志郎]
〈自由論題〉
高齢者における相対的剥奪の割合と諸特性――JAGESプロジェクト横断調査より[斉藤雅茂・近藤克則・近藤尚己・尾島俊之・鈴木佳代・阿部彩]
フィラデルフィア市におけるマイクロクレジット機関のケーススタディ[佐藤順子]
貧困に関する政策および運動情報 2013年7月~2013年12月[山田壮志郎/五石敬路/小西祐馬/村上英吾/北川由紀彦]
貧困研究会規約
原稿募集及び投稿規定
編集後記
前書きなど
【編集後記】
欧米のアクティベーション類型からみたとき、生活困窮者自立支援制度はどのような特徴をもつのだろうか。また、生活保護制度など多様な制度が併存する現状をどうとらえられるだろうか。悩ましい状況にある。[福原]
特定秘密保護法の次は、ワールドカップを目くらましに集団的自衛権。解釈改憲なんて、「改憲派」を含めて人を舐めている。「いじめられている友達を助ける権利」などとふざけた例えを使うマスコミもしかり。君は人を殺せるかと問うべきだ。[松本]
「女性の活用って言葉、嫌だよね」。ある日の演習で女子学生たちが気色ばんで議論している。女性の「活用」、外国人家事労働者の「活用」等々、「人材活用の多様化」なる人間のモノ化はどこへ向かうのか。貧困率悪化のもと、性の商品化もより一層、加速化するだろう。その前に何ができるのかが問われている。[湯澤]
安倍政権は成長戦略のなかで労働力不足解消のため「技能実習制度」の「拡充」を決めた。また、震災復興やオリンピック・パラリンピック関連の建設需要に対応するため技能実習制度修了者の雇用を認める方針を固めた。いずれも、諸外国から「奴隷的」とも「強制労働」とも言われた同制度の「国際貢献」という建前さえもかなぐり捨てるものだ。これが「美しい国」なのか。[村上]
社会保障審議会が最新の財政検証を公表した。高い経済成長がなければ公的年金の所得代替率は50%を割り込む。一方、非正規雇用1200万人への被用者年金の適用拡大は所得代替率を大幅に改善することも示した。細切れ雇用・高齢者の貧困の防止のため、適用拡大を今こそ大胆に進めなくてはならない。[山田]
出版業界について話してほしいということで、先日、某大学にて講義なるものをさせていただいた。私が受講生の年代だったころは、出版業は学生の人気職種だったが、電子時代となり現況は厳しい。しかし、紙でこそ伝えられるものがあると信じて、さまざまな問題を社会に発信していきたい。[明石書店・神野]
今号の特集2で扱った扶養の問題は、生活保護だけでなく、世帯を単位とする他の社会保障制度さらには税制にも及ぶ。また、危機的状況にある親子・夫婦のつながりを絶つ支援、つながりの絶たれた家族役割を代替する支援、疎遠になった家族のつながりを修復する支援などと大きく関わっている。継続して議論を深めていきたい。[布川]