目次
序文[デズモンド・ツツ]
Ⅰ 英知
生まれつき人を憎む人間はいない
誰にも良いところがある
人間は矛盾に満ちている
私も躓いた
教訓を学んだ
持っているものから創り出す
記憶はアイデンティティを織りなす
計画を立てること
頼りになる友人
苦難を希望に変える
転ぶたびに立ち上がる
自分の運命の主人
人類が聖人を生み出す
誰もスーパースターではない
英雄は和解し建設する
未知の世界のドアを開く
教育は成長の大いなる原動力
スポーツには世界を変える力がある
文化は永遠に残る
宗教に匹敵する力はない
平和は最大の武器である
より良い世界が待っている
他人の人生にどんな違いをもたらしたか
真実と共に生きる
別れを言うときがきた
Ⅱ 原点
私の信念
人種差別を憎む
肌の色に基づいて考えるのを止める
反逆者として生きる
武器を手に取る決心をしたのは
もう一度人生をやり直せるとしても
心の準備ができていた
一人前の自由の闘士になった
刑務所は自由を奪うだけではない
決して尊厳を失わない
絶望に身を任せることができなかった
刑務所で手紙を書くこと
私は決して後悔しない
刑務所は人格を試す
勇気は恐怖の欠如ではない
私は聖人ではない
人々が私を作り上げた
自由になることを確信した
自由を軽んじてはならない
自由を愛するがために
暴力は最強の武器ではない
抑圧される者も抑圧する者も同じ
Ⅲ 勝利
平和と民主主義と自由を!
生まれてはじめての投票
民主的に選出されたはじめての大統領
民主主義が自由をもたらしても
私たちは和解を選んだ
過去を許さなければならない
宗教は社会の良心
信仰は自分だけのこと
相違点は私たちの強み
交渉するときは
妥協以外に選択肢はない
真の指導者
Ⅳ 未来
私の義務だった
兄弟姉妹として守る
幸せのもと
思いやりの文化
真の自由を獲得する
精神生活の基盤
社会には批判が必要だ
エイズは単なる病ではない
貧困の牢獄に閉じ込められる
貧困の解消
女性の役割と地位
いかに強力な国でも
皮肉の商人に挑戦する
この惑星のあらゆる地域
開かれている唯一の道
未来は若者のもの
輝かしい未来が手招きする
ノーベル平和賞受賞演説
謝辞
訳者あとがき[長田雅子]
前書きなど
訳者あとがき(長田雅子)
(…前略…)
人にアドバイスを与えるのは簡単だ。普遍的な真理を口先で唱えるのは誰だってできる。マンデラやガンディーの言葉が私たちの心を打つのは、彼らがその言葉を生きたからである。実践者としての重みがそこにはある。
「南アフリカは遠い」と思われるかもしれない。しかし、マンデラが命を賭けた差別の撤廃や人権擁護は、日本人にとって他人ごとではない。部落問題や在日韓国・朝鮮人問題から、いじめ、児童虐待、性差別、障碍者対策、福祉問題、外国人労働者の受け入れに至るまで、目を開いて見回せば、私たちの周りに差別の種は沢山ある。
また、アフリカの人たちが伝統的に大切にしてきたこと、即ち先祖を敬うこと、年長者を敬うこと、謙虚であることなどは、日本人が伝統的に大切にしてきたことでもある。マンデラは本書で「ウブンツ」という概念に触れている。「人は他の人の存在があってはじめて人間になる」という感謝の気持ちと助け合いの精神である。「人」と「間」というふたつの漢字が「人間」を形成する日本語に通じるものがないだろうか。
「伝統」がすべて素晴らしいわけでない。だが、南アフリカでも日本でも、物質主義や西洋的個人主義の浸透から、伝統の中の、自分より他人を思う美しい心が忘れられがちだ。そんな今こそ、マンデラが残してくれた「未来への覚え書き」(原題)を真摯に受け止め、マンデラの言葉を生き、次の世代へ伝えていくことが大切ではないか。
(…後略…)