目次
まえがき――本書の特色と謝辞
第Ⅰ部 雲南少数民族の森と文化の実情
第1章 地域のカミを祀る村――西双版納傣族自治州勐海県勐遮郷曼来村(タイ族)
第2章 他村の森に焼畑を開いた村――同州勐海県巴達郷曼来村老寨(ハニ族)
第3章 西双版納国王巡幸伝説の村――同州勐海県布朗郷吉良村(プーラン族)
第4章 土壌崩壊の危機迫る村――臨滄地区臨滄県章駄郷勐旺大寨(タイ族)
第5章 深い森をもつ村――同地区同県章駄郷腊東村(タイ族)
第6章 定住化させられた焼畑狩猟民――同地区同県南美郷南楞田村(ラフ族)
第7章 神樹を守った首狩り伝説の村――同地区双江県沙河郷布京村(ワ族)
第8章 国際河川上流の国境の村――保山市騰衝県猴橋鎮沙家◆村(リス族)◆=[土貝]
第9章 漢文化の影響濃いワ族の村――同市同県荷花傣族佤族郷汪家寨(ワ族)
第Ⅱ部 諸課題の分析
第1章 雲南少数民族の民族史と自然生態
第2章 少数民族の権利を侵してきた森林政策
第3章 森林の分類と利用
第4章 森林と精神文化
第5章 退耕還林――ジレンマに終わった森林再生政策
第Ⅲ部 結論と提案
第1章 少数民族の森林文化の現代的意義
第2章 焼畑はなぜ重要か
第3章 新しい森林政策と思想――私たちの提言
付録‐比嘉政夫 「琉球・雲南・ヤマトの神々と自然」
用語解説
索引
前書きなど
まえがき──本書の特色と謝辞
本書の目的は、中国少数民族を主人公として扱い、中華人民共和国の成立以前から営々と続けてきた彼らの森林文化と本来持っていた森林利用権のありようを明らかにすることである。そして、彼らの森林と共生する生活様式を当該地域の未来の経済社会構築の中核に据えるべく、その現代的な意義と価値を提示することにある。同時に、本書は中国政府の政策立案におけるジグザグ・唐突性と執行における強権性を直視する。
本書の方法的特色を挙げると、一方では後述するように、きめ細かい現地調査に基づいた実情把握であるとともに、他方では広く民族(俗)学、環境科学(とくに森林科学)、中国民族史学、法制史学にまたがって高度に社会科学的な分析を施した学際的作品である。また、問題意識からみれば、本書は東南アジア少数民族の視座に立った学問的探求と中国の体制に対する実践的な危機意識とを総合化したものでもある。
本書の構成は、第Ⅰ部がその現地調査に基づいた九ヶ村の状況、第Ⅱ部は現地調査から得られた知見を五つの視点からまとめて分析と考察を加えたもの、第Ⅲ部はその分析と考察から得られた結論と提案、そして付録は国際シンポジウムでの比嘉政夫の発表原稿である。また、巻末には本書の文中に出てくる重要かつ一般的でない用語の解説リストを付けた。
(…後略…)