目次
資料目録
略語表
序章
はじめに
第1節 オルロのカーニバルの概観
第2節 先行研究と本研究の意義
第3節 フィールド・ワーク
第4節 本研究で使用する用語について
第5節 章構成
注
第1章 オルロのカーニバルをとり巻く環境
はじめに
第1節 鉱産業都市オルロの成立と発展
第2節 ボリビア革命に至るプロセスとオルロにおいて高まる労働運動
第3節 ボリビア革命の成立と挫折
結論
注
第2章 オルロのカーニバルを支える神話(1940年代)
はじめに
第1節 「アメリカの征服」劇
第2節 トゥパック・カタリ運動
第3節 路上のカーニバルの位置づけの変化
第4節 「ワリの神話」と「ニナ・ニナ」の物語
第5節 「チル・チルの物語」に提示される理想の社会像
結論
注
第3章 オルロのカーニバルを構成する宇宙観と農耕儀礼(1952年革命後)
はじめに
第1節 「悪魔の踊り」と「七つの大罪」劇
第2節 「七つの大罪」劇における悪徳の性格が提示するもの
第3節 鉱山労働者の儀礼と女性の神格
第4節 アラシータと聖処における儀礼
第5節 鉱産業都市オルロにおけるカーニバルと農耕儀礼との関係
結論
注
第4章 明確化していく政治理念(1960年代)
はじめに
第1節 オルロに樹立された人民政府
第2節 都市の空間構成と人民政府の拠点
第3節 チャージャの政治的役割
結論
注
第5章 国家に対峙した「国民文化」の創出(1960年代から1970年代初頭)
はじめに
第1節 口承文化をめぐる国際社会の動向とボリビア政府とオルロ市の対応
第2節 オルロにおける「フォークロア」文化への関心
第3節 1960年代後半からオルロのカーニバルに登場した新しいジャンル
第4節 オルロ市の文化政策からみる国民文化の概念
第5節 オルロ市の文化政策からみる国民国家像
結論
注
第6章 急増する女性参加と新しい国民像の創出(1970年代から1980年代にかけて)
はじめに
第1節 「レィエス・モレノス」と「カポラレス」という新しいジャンル
第2節 フィグーラと呼ばれる女性参加者
第3節 カポラレスに参加する二種類の女性たちの役割
第4節 カーニバルの女性が提示する複数の女性像
結論
注
第7章 カーニバルと経済戦略(1980年代後半)
はじめに
第1節 観光としてのオルロのカーニバルの実態
第2節 踊り手たちに対する経済対策
第3節 オルロのカーニバルの活性化と観光化のための具体策
第4節 オルロに期待された観光産業の特徴
結論
注
第8章 「世界遺産」の登録基準とオルロのカーニバル固有の規範(1990年代)
はじめに
第1節 世界遺産登録を意識して加えられた変更事項
第2節 文化の複数のあり方
第3節 「悪魔の踊り」と「七つの大罪」劇の異なる規範と解釈の多様性
第4節 「悪魔の踊り」の普遍的価値とは何か
第5節 口承文化が世界遺産に登録されることの意味
結論
注
第9章 世界遺産「オルロのカーニバル」をめぐる現状と展望
はじめに
第1節 アウテンティカに浮上した諸問題
第2節 アウテンティカ博物館の落成式
第3節 問題の解決へ向けた打開策
第4節 文化と社会
結論
注
終章
付録
付録1 オルロ社会とボリビア国の歴史年表
付録2 オルロのカーニバルへの参加グループ設立年表
付録3 ブロック制によるグループの入場順序
付録4 ティワナク宣言
付録5 『ラ・パトリア』紙(La Patria)1953年2月21日(土)に掲載された、当時のオルロ市長に宛てたムリージョの書簡
付録6 「フォークロアの首都」宣言
付録7 大統領令第09088号
付録8 政令第15304号
付録9 法律第602号
参考文献
日本語文献
外国語文献
索引
謝辞
前書きなど
序章
第5節 章構成
本書の構成は、次のようになっている。
第1章では、本書の全体の理解につながるように、本研究の舞台であるボリビアとオルロの概要と歴史について記述する。本研究は、オルロのカーニバルを取り扱っているが、オルロに生活する人々の社会状況、政治体制や経済情勢との関連に重点をおいている。このため、オルロ、およびボリビアの今日に至るまでの経緯について知っておくことが必要である。
第2章から第9章までは、オルロのカーニバルとその時々の社会状況との関係を時系列的に論じているが、同時に、各章には、儀礼、政治、経済など異なるテーマがある。これは、本研究が、オルロのカーニバルの諸相を分析することを目的としているためであり、それぞれの章において論考する異なるテーマが、オルロのカーニバルの全体像をみるためのパーツであるという構成になっている。この章構成の仕様によって、いくつかの章で、扱う時代が重複することになったが、このような章構成を用いることで、ボリビア国内の需要とオルロのカーニバルとの関係だけではなく、国際社会におけるオルロのカーニバルの位置づけを明確にすることができると考えている。
第2章では、オルロのカーニバルで1940年代に上演されていた劇と当時のボリビアの社会情勢、および、オルロのカーニバルを実行するきっかけとされる神話とオルロのカーニバルを通じて継承されてきた複数の神話や物語とともに分析し、オルロのカーニバルと、ボリビアの歴史における重要な出来事、ボリビア革命とを関連づける。
第3章では、1952年のボリビア革命成立直後から、ボリビア社会が軍事政権の台頭を許す1960年代におけるオルロのカーニバルを扱う。ボリビア革命の樹立によって、オルロのカーニバルを通じて継承されてきた神話や劇が、どのようにメッセージを変えていくのかについて、革命前と革命後のオルロのカーニバルの特徴を比較し、革命への反省や革命政権への評価について考察する。この章で、今日のオルロのカーニバルのハイライトでもある「悪魔の踊り」と、「悪魔の踊り」グループによって上演される「七つの大罪」劇についても取り上げる。今日、鉱山労働者の踊りであると宣伝されている「悪魔の踊り」と農耕儀礼との関係についても分析する。第3章ではオルロのカーニバルにおける文化的特徴に重点をおき、第4章では、オルロで顕在化する政治運動とオルロのカーニバルとの関連について検証し、政治的側面に焦点を当てる。
第4章では、軍事政権による弾圧に対して、オルロのカーニバル、そして、オルロのカーニバルがオルロ社会に浸透していったことによって普及するようになった儀礼をもとに展開される政治運動について検証し、文化と政治との関係と、儀礼に込められた政治批判と理想の社会像について論じる。
続く第5章では、時代としては第4章と重なる部分もあるが、オルロ市行政がオルロのカーニバルに関与し始めていくことの意味について検証している。第4章では人々の政治行動に焦点を当て、第5章では、オルロ市という地方行政の政策面に注目している。第5章では、オルロ市行政がオルロのカーニバルに対して施行していく文化政策を分析する。
第6章では、1970年代のオルロのカーニバルの特徴である女性の踊り手の参加と、長期化する軍事政権を擁護するための新しいジャンルの踊りの創出を取り上げる。既存の体制を肯定する階級が支持する公式の歴史観と社会認識が、オルロのカーニバルを始めた被抑圧階級の歴史観と社会認識と、どのような形で共存可能となっているのかについて明らかにする。
第7章では、オルロのカーニバルにおける経済戦略について論じる。
ボリビアでは、1982年に18年間続いた軍事政権に終止符が打たれたが、民主政権は、軍事政権期に蓄積された対外債務と経済危機という大きな問題を抱えて出発することを余儀なくされた。さらに、1985年にはボリビア経済の支柱であった錫の国際価格が急落し、ハイパー・インフレーションと政情不安がボリビア社会を襲う。鉱産業都市オルロでは、相次ぐ鉱山の閉山と労働者の大量解雇に見舞われ、人口の流出が深刻化する。経済危機はカーニバルの参加者にとっても大きく影響していた。このような情勢下、オルロのカーニバルに、鉱産業の代替産業としての経済的な効果が期待されるようになる。第7章では、オルロのカーニバルの観光産業化が促進される際に提案された経済案を分析し、その独自性を明らかにする。
オルロのカーニバルを観光産業として立脚させるために有効とみなされた方法のひとつに、ユネスコから世界遺産として認定されることが挙げられていた。
第8章では、世界遺産登録へ向けてオルロが行った国家や国際機関に対するはたらきかけと、1990年代後半のカーニバルに加えられた変更事項が、「国際的な基準」とオルロのカーニバル独自の基準との相違点を顕在化していく様子について検証し、文化をめぐる複数の規範について考察する。
第9章では、オルロのカーニバルが世界遺産に登録されて以降、期待されていたことと現実との間にどのような相違があったのかについて、オルロのカーニバルの歴史上最も古いグループに焦点を当てて論じた。
終章として、口承によって継承されてきたオルロのカーニバルの半世紀以上にわたる様相を総括し、識字・有形文化とは異なるオルロのカーニバルの全体像を提示する。