目次
特集Ⅰ 個人的な経験と障害の社会モデル――知的障害に焦点を当てて
【シンポジウム――障害学会第9回大会から】
開催趣旨(津田英二)
第1部:知的障害の社会モデルをめぐる理論的課題
・司会(津田英二)
・問題提起(田中耕一郎)
・解説(河口尚子)
第2部:語り――「痛み」の経験を契機として
・司会(津田英二+寺本晃久)
・語り手1(団延幸+植戸貴子)
・語り手2(李昭洋+李義昭)
・語り手3(三尾啓介+篠原眞紀子)
第3部:語りと社会モデルをつなぐ
・コメント(寺本晃久)
・コメント(岡部耕典)
会場質疑(司会・津田英二)
総括コメント(田中耕一郎)
特集Ⅱ 「地域に出る」それは手段だったのか目的だったのか
【障害学研究会中部部会 ワークショップ『施設/社会──少年院と障害者労働から考える』から】
趣旨説明(河口尚子・渡辺克典)
「地域に出る」それは手段だったのか目的だったのか(青木千帆子)
質疑応答(司会・土屋葉)
特集Ⅲ 障害者の自己決定権と給付決定の公正性――イギリスにおける自己管理型支援の法的試み
【障害学研究会九州沖縄部会夏季研究会から】
特集Ⅲの編集にあたって(堀正嗣・岩田直子)
障害者の自己決定権と給付決定の公正性――イギリスにおける自己管理型支援の法的試み(河野正輝)
論文
自閉症スペクトラムを持つ成人女性の生きづらさ――包括的支援の必要性について(栗山惠久子)
エッセイ
選評(綾屋紗月・石井政之・臼井久実子・福島智)
「お電話ありがとうございます。」――型的なマニュアル言葉の抑圧から解放へ(須田研一)
僕が体験した/している「障害」について語ろう(松本留五郎)
書評
書評/角岡伸彦著
『カニは横に歩く――自立障害者たちの半世紀』(渡邉琢)
書評/定藤邦子著
『関西障害者運動の現代史』(渡邉琢)
リプライ 著者から(定藤邦子)
書評/松岡克尚・横須賀俊司編著
『障害者ソーシャルワークへのアプローチ―その構築と実践におけるジレンマ』(小山聡子)
リプライ 編者から(松岡克尚)
リプライ 編者から:小山聡子氏への応答(横須賀俊司)
ブックガイド/大畑楽歩著
『三重苦楽――脳性まひで、妻で母』(田島明子)
ブックガイド/荒井裕樹著
『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』(廣野俊輔)
ブックガイド/堀正嗣編著
『共生の障害学――排除と隔離を超えて』(堀智久)
ブックガイド/立岩真也・堀田義太郎著
『差異と平等――障害とケア、有償と無償』(市野川容孝)
ブックガイド/玉垣努・熊篠慶彦編著
『身体障害者の性活動』(前田拓也)
ブックガイド/中邑賢龍・福島智編著
『バリアフリー・コンフリクト―争われる身体と共生のゆくえ』(要田洋江)
障害学会会則
『障害学研究』編集規程
『障害学研究』自由投稿論文・投稿規程
『障害学研究』エッセイ審査規程
障害学会第9回大会プログラム
前書きなど
編集後記(杉野昭博)
『障害学研究』第9号には、論文8本、エッセイ6本の応募があり、論文1本とエッセイ2本を掲載することができました。自由投稿論文については、数字の上ではかなり厳しい査読結果になっていますが、妥当な結果だと考えています。今号への投稿論文の問題点は主として2つに集約されます。一つは、テーマそのものは大変興味深いものでしたが、論文として未完成なものがいくつかありました。投稿に至るまでの段階で、さまざまな研究会などで助言を得ることが必要だと思いました。投稿希望者が地方レベルでじっくり発表できるような障害学研究会が必要なのかもしれません。もう一つの問題点は、投稿規程の第1項にある「障害をめぐる既存の知の問い直しをめざすという障害学の目標に合致するもの」という条件に必ずしもそぐわない投稿が散見された点です。また、論文としての完成度は高くても、障害学会が適切な投稿先とは考えにくい投稿もありました。障害学は多様な分野に開かれた学際学会ですが、あまりに専門的な内容になると、編集委員会の査読能力にも限界があります。学際学会のマナーとして、専門外の研究者にも理解できるような配慮をした論述が必要だと思います。
エッセイについては、今号から選者が大幅に入れ替わり、人数も1名増員されて4名となりました。投稿数も増え、審査結果も選者によって多様でしたが、最終的には4人の選者がほぼ一致して推薦した作品を掲載しました。
特集は第9回大会シンポジウムのほかに、障害学研究会中部部会と九州沖縄部会の活動から一部を紹介しました。各地方の障害学研究会は、障害学会とは独立した組織ですが、障害学会そのものが関西と関東の地方研究会を母体に発足した経緯などを考えれば、障害学会の「足腰」にあたる部分だと思います。地方研究会の活動があってこそ、学会大会および学会誌の充実が可能になると思います。
書評欄については、3点の書籍についてリプライも含めて充実した議論を掲載できました。特集欄については津田英二さん、青木千帆子さん、河口尚子さん、岩田直子さん、エッセイ欄については斉藤龍一郎さん、書評欄については前田拓也さんが編集・校正を担当してくれました。