目次
はじめに
第1章 「子育てネットワーク」はどのように語られてきたか――これまでの先行研究・実践報告などの整理から(中谷奈津子)
1 「子育てネットワーク」への視座
2 「ネットワーク」と「子育てネットワーク」
3 視点と方法
4 第1期(~1995年)――漠然としたイメージ
(1)「子育てネットワーク」の登場
(2)「子育てネットワーク」をどう捉えるか
(3)つながりを意識しはじめた「子育てネットワーク」
5 第2期(1996~2000年)――さまざまな意味合いを持つ「子育てネットワーク」
(1)少子社会から子育て支援の関心へ
(2)多様化する「子育てネットワーク」
(3)実際のつながりから見えてくるもの――その効果と課題
6 第3期(2001~2005年)――社会的な欲求を満たす子育てインフラ
(1)子育て支援を追い風として
(2)市民主体に収束していく「子育てネットワーク」
(3)当事者から地域、社会へ、そして次世代へ
7 「子育てネットワーク」と「ネットワーク組織」
8 本書における「子育てネットワーク」
9 分析するデータ
第2章 「子育てネットワーク」の概要――調査結果の概要から見えてくるもの(西村真実・中谷奈津子)
1 「子育てネットワーク」へのアプローチ
2 はがき調査における結果の概要
(1)「子育てネットワーク活動」の有無と子どもの年齢
(2)「子育てネットワーク活動」の有無と特別なニーズ
(3)はがき調査から見えてくるもの
3 質問紙調査における結果の概要
(1)組織概要
(2)活動内容
(3)組織の構成員
(4)質問紙調査の概要から見えてくるもの
第3章 「子育てネットワーク」の誕生のプロセス――実践者たちの“語り”からのアプローチ(相戸晴子)
はじめに
1 当事者個人のニーズから
(1)孤立の子育てから解放されるためのネットワーク
(2)個別の課題をもつ子どもの育ちと親の支え合いを次世代へつなげるネットワーク
(3)妻や母だけではない「自分」に向き合うためのネットワーク
2 活動団体のニーズから
(1)子育てサークルのネットワークのニーズ
(2)子育て支援のネットワークから行政との協働へ
3 ネットワーク化そのもののニーズから
4 「子育てネットワーク」誕生のプロセスから見えてきたもの
第4章 「子育てネットワーク」と行政との関係――エンパワーメントプロセスからの分析(中谷奈津子)
1 行政との関係の必要性
2 エンパワーメントとは何か
3 行政からの援助と住民参加の実際
4 子育てネットワークにおけるエンパワーメントプロセス
5 子育てネットワークの分類――エンパワーメントプロセスに基づいて
6 子育てネットワークの組織特性とエンパワーメントプロセス
(1)意思決定協力型の特性とエンパワーメントプロセス
(2)独自性型の特性とエンパワーメントプロセス
(3)バランス型の特性とエンパワーメントプロセス
7 子育てネットワークのエンパワーメントに向けて
第5章 「子育てネットワーク」の活動類型――活動の特徴から捉えた子育てネットワークの現状(橋本真紀)
1 活動特徴からみた子育てネットワークの類型
(1)子育てネットワークの活動への着目
(2)子育てネットワークの活動に関する諸説
(3)子育てネットワークの活動傾向
(4)子育てネットワークの活動類型とその特徴
(5)活動類型にみる子育てネットワーク組織の活動傾向
2 活動類型からみた行政との関係性
(1)非営利組織と行政との関係の現状
(2)各類型と行政との関係
(3)子育てネットワークの行政との関係性
第6章 「子育てネットワーク」の効果と課題(相戸晴子・越智紀子)
1 効果と課題を捉える意味
(1)はじめに
(2)分析の手順と方法
2 子育てネットワークの効果
(1)個と個のつながり
(2)個の気づき
(3)個の学びと成長
(4)組織にもたらした効果
(5)地域社会にもたらした効果
(6)効果として見えてきたもの
3 子育てネットワークの課題
(1)多様なニーズと資源不足
(2)活動のジレンマ
(3)連携・協働
(4)活動の継続性
(5)課題として見えてきたもの
第7章 「子育てネットワーク」のこれから(中谷奈津子)
1 子育てネットワークを取り巻く社会背景
2 子育てネットワークのイメージ
3 本調査から捉えられる子育てネットワークの全貌
(1)先行研究・実践報告などの整理から
(2)調査結果の概要から
(3)子育てネットワーク発足の経緯から
(4)他組織との関係から
(5)活動類型から
(6)効果と課題
4 イメージと異なる「子育てネットワーク」
5 子育てネットワークのこれまでとこれから
おわりに
前書きなど
おわりに
(…前略…)
筆者は、これまで子育てに関する調査・研究を行ってきた。数々の文献で見受けられるのは、近所での世間話の重要性であった。しかし子どもを持つものとして、表面的な世間話の有無というより、むしろ世間話のできる間柄の奥深さを思う。子どもが小学生の頃、子どもを叱りつけて外に放り出したものの、どうしようかとハラハラしていたとき、子どもに「大丈夫? どうした?」と声をかけてくれたのは、たまたま通りかかった近所の知人であった。子どもが鍵を忘れて誰もいない家に入れなくなったとき、子どもが助けを求めたのも近所の友人宅であった。ちょっとした用事で子どもに昼ご飯を食べさせられないとき、「おにぎりでいいよね」と笑い合って、互いに子どもを預かり合うこともあった。学校行事に参加できないとき「○○ちゃんさ、こんなだったよ。がんばったよね」と報告してくれる人もいた。
それら一つひとつは、その時の筆者には半ば当たり前のこととして受け止められていた行為であるが、その近隣ネットワークが切断されてしまった今となっては、私たちが長い年月をかけて、繰り返し繰り返し、結びなおしてきたネットワークの表れであったと気づかされる。そして子どもを育てるものにとって、また地域を生きるものにとって、この何気ない、半ば当たり前の関係がいかに大切か、いかに私たちの存在意義を確認してくれているものかと思う。それはそのまま、本研究でとりあげてきた「子育てネットワーク」の意義と一部、重なるものである。
子育ては、人生における一つの危機だと思われる。危機を乗り越えられるか否かは、その人が持つ、あるいはこれから築いていく、子育てのネットワークに関わってくる。雇用の流動化が進む社会の中で、また、2011年の東日本大震災を契機として、子どもを抱えながら転居を余儀なくされる家族も多いだろう。障がいや病児、多胎児、外国籍、ひとり親、災害復興の問題など、一人では抱えきれないニーズを抱え、苦悩する家族も多いのではないだろうか。それら家族が、決して「透明家族」にならないように、「子育てネットワーク」の看板を掲げ、地域社会における目印として位置づいていくことを願う。それは、日々の困難を互いに語り、これからの方策をともに考え、行動し、さまざまな他者を巻き込んでいく社会変革の拠点ともなりうる。
本書は、平成18年度文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(B))によって実施された調査研究「地域子育て支援の推進に関わる住民主体活動の果たす役割に関する研究」(研究代表者:山縣文治)の分析結果を取りまとめたものである。はがき調査、質問紙調査、インタビュー調査と調査は多岐にわたったが、快くご協力くださった子育てネットワークの皆さまに深く感謝申し上げたい。特に、「私たちでお役にたてれば」と詳細なインタビュー内容の掲載についてご快諾くださった子育てネットワークの方々に重ねて感謝の意を表したい。一連の調査をまとめるにあたり、住民主体の地域子育て支援の潮流が、身近な生活を変え、地域を変え、社会を変える大きなうねりとなっていったことに大きな感動を覚えた。震災後は、子どもたちの日常を取り戻す活動を積極的に行っている子育てネットワークも多いという。それら活動のうねりが、今度は、この社会全体の「子育てを大事にしようという意識レベルでのネットワーク」にもつながっていくことを願う。
(…後略…)