目次
刊行にあたって(小林美智子)
序文
謝辞
第1章 子どものケアと保護
公衆衛生学的アプローチ
第2章 ケア・プログラムの概観
生後最初の1年
第3章 ニーズの指標
第4章 子どもと親の情緒的発達
第5章 母子相互作用の観察
第6章 事例担当件数の管理
第7章 子どものための親支援の手引き
第8章 子ども保護
第9章 ケアパッケージを使用した事例の実例
第10章 CAREプログラムの評価
第11章 まとめ
保健師・助産師の家庭訪問における費用対効果
付録1 「あなたのニーズを知るために」助産師のための小冊子
付録2 「あなたのニーズを知るために」保健師のための小冊子
付録3 用紙A 誕生から5か月まで
付録4 用紙B 生後6か月から1歳まで
付録5 用紙C CAREプログラム
参考文献
監訳者あとがき
索引
前書きなど
監訳者あとがき(上野昌江・山田和子)
(…前略…)
このような状況にあるわが国において、周産期からの家庭訪問の方法、支援者の役割などについて詳細に記された本書の意義は重要であると考えます。本書には今後のわが国における家庭訪問の充実、質の向上、訪問を実施する保健師・助産師等のスキルアップにつながる要素が至る所に記されています。そのなかでも以下の4点について特に強調しておきたいと思います。
1つ目は、支援を必要とする家族をどのように見極めるかという点からニーズの指標を示していることです。わが国においては、妊娠届出、新生児訪問指導、乳児家庭全戸訪問事業などは、地域の全数の妊婦・乳幼児を対象に実施されていますが、そのなかから支援が必要な対象をどのように見極めるかが重要な課題になっています。また、出産した医療機関と保健機関が連携して養育支援を特に必要とする子ども・親、家族にかかわることの重要性から、情報提供の対象となる保護者や子どもの状況に関するさまざまな指標が示されていますが、必要な根拠や優先すべき項目などについては詳しく示されていません。イギリスでは支援が必要な子どもたちをハイリスクという表現ではなく「in need(援助すべき対象)」と位置付け、彼らを見極める「ニーズの指標(Index of Need)」として14項目を挙げています。さらに、各項目の必要性とその根拠について述べ、これまでの研究成果から各項目に重み付けをし、得点化を行っています。また各事例に「ニーズの指標」をどのように活用できるかという具体策も示しています。私たちが実際の活動で「気になる事例」に対して、関係職種・機関と情報共有していく際の根拠として活用できます。
2つ目は、1つ目で示した「ニーズの指標」というチェックリストだけで親子を見ていくことの限界に触れ、家庭訪問の場面で親子関係を観察することの重要性とその観察ポイントを心理学のエビデンスを踏まえて丁寧に説明している点です。わが国において保健師が家庭訪問で観察する点として、親の育児や家事の状況、家の中の様子などがありますが、親子関係についてはあまり触れていません。親子関係の質という新たな視点を持つだけでなく、観察内容からコミュニケーションを発展させ、親との関係を深めるのに役立てることができます。
3つ目は親子関係の基盤である愛着についての内容が詳しく示されていることです。母子保健活動において「気になる親」というのは多くの保健師が感じていることです。その「気になる」をひもとくと愛着の問題が潜んでいると考えられます。愛着の問題は、親自身がどのように育ってきたか、実母、実父などとの関係を考えていくことにもなります。保健師はこれまで子どもと親の支援で発育発達を大事な視点としてきましたが、虐待予防の支援を行っていくにあたってはさらに愛着の視点が不可欠であり、今後教育のなかでも強化していきたい内容です。
4つ目は支援を求めてこない親とパートナーシップを形成しながら進めていく支援関係について述べている点です。現在虐待発生予防の第一線で活動している保健師が直面している困難の1つは、援助が必要な対象であるにもかかわらず自ら支援を求めてこない親への対応です。また虐待死亡事例の分析においても、親が保健師や関係機関のかかわりを拒否していたことが大きな問題になっています。このような親・家族といかに関係をつくり、継続した支援を行っていくことができるか。イギリスでは児童法の主な原則の1つとして親と専門職がパートナーシップを築くことが挙げられています。それは、「専門職が親・家族に必要な支援内容を決めるのではなく、親が専門職と協働して自分や子どものニーズを考えるように促され、自分たちにとって必要なのはどのような種類のサポートやサービスかを決めることである」と述べられています。かかわることが難しい親とパートナーシップをとる方法や親の語りをどのように導き出すのかについての具体例が示されています。虐待防止活動において看護職(保健師・助産師・看護師)は、介入ではなく常に支援という役割を担っていることを認識できる重要な内容となっています。
これらの点に加え本書では家庭訪問の評価の重要性と家庭訪問による虐待発生予防に及ぼす費用対効果についても述べられています。地域では家庭訪問をはじめ乳幼児健診、親子教室などさまざまな事業を行っています。実施状況、実施直後の親子の変化など短期的な評価は行っていますが、長期的に子どもと親・家族の変化、虐待の減少、費用対効果などについて評価することは、スパンが長すぎるために難しいことかもしれません。しかし、それらを行っていくことが次の実践やエビデンスになることを理解しておくことは地域の活動において特に重要です。
(…後略…)