目次
謝辞
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この本はだれのためのもの?
5段階表とは?
レベル2がレベル3に、レベル4がレベル5になるのはどんなとき?
物事の見え方や考え方は人によって違う
だれも自分一人ではできない
キスやチラ見が犯罪になるのはどういうとき?
グレーゾーンを理解すること
事態がコントロールできなくなるのはどんなとき?
でもそれはフェアじゃない!
さいごに
あなたを落ち着かせるためのアイデア、あるいはレベル4から2へ、レベル3から1へ、自分でレベルダウンさせるためのアイデア
参考資料
訳者あとがき
前書きなど
訳者あとがき
本書は、Kari Dunn Buron著『A 5 Is Against the Law! Social Boundaries: Straight Up!』(2007)を翻訳したものです。これは、すでに日本語版が出版されている同じ著者の『これは便利! 5段階表』の応用編とも言えるもので、特に自閉症スペクトラムの青少年が意図せず犯罪行為に走ってしまわないための支援法です。自閉症スペクトラムの人が理解しづらい暗黙のルールや対人境界について、具体的に指導する方法を解説したものです。
目に見えないことを理解することが困難な自閉症スペクトラムの人には、目には見えないけれども社会生活を営む上ではとても大事な情報を理解することが難しく、そのためにさまざまな対人関係上のトラブル、ひいては犯罪行為や違法行為に結果することがあります。
そのような大事な社交情報には、他者の心理(意図・感情・期待・知識など)に関するものや、世間で暗黙の了解事項となっていること(常識・慣習など)、非音声言語コミュニケーション(表情や姿勢の感情的な意味)などがあります。本書では特に、《対人境界》(social boundaries)ということに焦点を合わせています。このような不可視的な情報を伝え、理解してもらうためには、視覚的に伝える(視覚的構造化)ことがとても有効です。この視覚的構造化は、自閉症スペクトラムや注意欠如/多動性障害(AD/HD)、学習障害などメリハリの著しい発達のし方をする人だけではなく、メリハリのない発達のし方をする人(いわゆる健常とか定型発達などと呼ばれる人)にも、実は理解しやすい方法なのです。しかし、特に音声言語コミュニケーションに大きなメリがある自閉症スペクトラムの人には、必須といってよい指導方法です。
自閉症スペクトラムの人に何かを教えるということは、教わる側からすれば理解コミュニケーションの問題です。そして、理解コミュニケーションの支援は必然的に視覚的構造化が基本となることは、この40年間に実証され続けています。はやりの言い方では、エビデンス(科学的根拠)があるということです。
本書では、自閉症スペクトラムの人に、不可視の対人境界をどの程度踏み越えているか、そして踏み越えの程度に応じて取るべき行動を、5段階表の考え方に基づいて、文章や図で視覚的に教えようとするものです。これですべての問題が解決するわけではないでしょうが、これまで口頭で叱責したり罰を加えたりしても効果がなかったり、あるいは逆効果となったりしたことが、この方法で解決することも少なからずあると思われます。訳者はまだ使ったことはありませんが、自閉症スペクトラムの青少年を支援する人たち(親も含め)にとって、使えそうな手段が一つ加わることは意味のあることだと考えて、本書を訳出することにしました。
この本も、ギネスの会(原書を一人では読めない人のための読書会)で取り上げたテキストですが、本書がギネスの会の最後の作物となりました。ギネスの会のメンバー(川高寿賀子、三科哲治、澤月子、久賀谷洋、田中浩一郎、福田純子)のこれまでの励ましに、ここであらためて感謝します。また、このたびも明石書店の大江道雅さんのお世話になりました。ありがとうございました。