目次
研究誌『開発教育』の発行について――「深まり」と「広がり」を求めて
特集 オルタナティブな経済と開発教育
特集にあたって――その問題関心と掲載論文の概略
〈総論〉
オルタナティブな経済と開発教育
――「経済」の原点と「教育」との接点を問う(湯本浩之)
〈理論編〉
連帯経済の発展と開発教育(西川潤)
エコロジー経済学の視点からのオルタナティブな社会構築の可能性(和田喜彦)
〈実践編〉
おカネに頼らない暮らしを
――おカネを使って、おカネのいらない社会を作る(田中優)
オルタナティブな農業と市場
――タイと日本の事例から(大野和興)
『民衆交易』にみる地域経済開発のオルタナティブ(堀田正彦)
変容するCSRを読み解く
――CSRの本質とサステナビリティ(新谷大輔)
ローカルの時代へ
――仕事とコミュニティをつなぐスロー・カフェ(吉岡淳)
オルタナティブな消費の現場から(贄川恭子)
市民の力でまちをつくる(又木京子)
実践事例報告
「地域の課題は世界の課題」を実践する
――ソムニードの「内」と「外」の活動(竹内ゆみ子)
いわてのフェアトレードものがたり
――国際協力からコミュニティづくりへ(宮順子)
地域を掘り下げ、世界とつながるESDの実践
――「まちづくりの」のカリキュラム開発から開かれる多文化共生への扉(小林祐一・加藤英嗣)
投稿論文
ロールプレイング・シミュレーションゲーム「開発が町にやってきた」の実践報告
――社会学教育としての試み(浜本篤史)
開発教育としてのスタディツアー再考
――省察と行動の視点から(林加奈子)
研究会報告
開発教育・ESDにおける国際交流の成果と課題
――「ESDの10年」中間評価の一環として(田中治彦)
地球市民教育の日韓交流の歴史と課題
――地球の木の取り組みから(丸谷士都子)
アジアにおけるコミュニティ・オーガナイジングから学んだこと(西あい)
小・中学校で開発教育をさらに展開するために
――授業づくりサークルからの報告(鈴木隆弘)
会議報告
第6回国際成人教育会議(CONFINTEA VI)参加報告(三宅隆史)
図書紹介
『創造的に対立解決――教え方ガイド』開発教育協会(奈良崎文乃)
『身近なことから世界と私を考える授業』明石書店(鈴木隆弘)
2010年度の開発教育協会の活動
研究誌『開発教育』58号投稿募集
編集後記
『開発教育』誌バックナンバー
開発教育協会(DEAR)の紹介
執筆者略歴
前書きなど
編集後記
今号の『開発教育』では、特集テーマを「オルタナティブな経済と開発教育」とし、総論を含めた理論編と実践編のあわせて10本の論文を掲載することができました。
本誌で「経済」に焦点をあてた特集を組んだのは初めてのことだと思いますが、このテーマを取り上げた背景には、深刻の度合いを増している日本国内の貧困や格差や失業といった問題があります。開発教育では、これまでも国内の開発問題や貧困問題に目を向けてきました。身近な食べ物などから、経済や貿易のことを考える教材なども作成してきました。しかし、リーマンショック以降の経済危機、先の見えないデフレ経済、そして、増え続ける日本政府の巨額な財政赤字の問題などは、政府や自治体の税収減少や財政危機などに直結しており、教育・医療・福祉といった私たちの暮らしや将来に大きな陰を落としています。
他方、小泉政権が打ち出した“貯蓄から投資へ”という日本政府の呼びかけに呼応して、金融教育や投資教育の必要性が叫ばれるようになりました。実際、学校現場では、金融業界や証券業界の協力を得ながら、「総合的な学習の時間」を利用して、金融や投資を学ぶ授業が実践されるような事例も生まれてきています。
こうした中で、経済や金融のグローバリゼーションをただ抽象的に議論するのではなく、経済や“お金”の問題により現実的かつ実践的に向き合っていく必要があるように思います。しかし、開発教育はその実践の中で、経済や“お金”の問題をどう取り上げ、どのような関わりをもっていけばよいでしょうか。「共に生きることのできる公正な地球社会」における経済や金融の姿やあり方とはどのようなものなのでしょうか。今回の特集がそうした議論や実践のきっかけになればと思います。また、会員の皆様の中で、経済や金融をテーマとした実践事例などがありましたら、ぜひ実践報告として本誌にご投稿いただければ幸いです。
なお、今号への投稿論文等は、申込件数が6件、実際の投稿原稿が4本でした。このうち査読を経て、最終的には2本の研究論文を掲載させていただきました。編集委員会では、「実践のための研究」の一層の充実に向けて、引き続き会員の皆様による実践研究や実践報告をできるだけ多く掲載していきたいと考えています。原稿の執筆や査読のポイントなどに関して、もしご質問やご相談などがありましたら、ご遠慮なく事務局までお問い合わせください。
最後になりましたが、特集を含め、ご寄稿ならびにご投稿いただきました執筆者の方々、そして、ご多用の中で査読にご協力いただきました多くの査読委員の方々に、この誌面をお借りして、厚くお礼申し上げます。
(編集委員・湯本浩之)