目次
○特集 児童養護施設の小規模化
特集にあたって(堀場純矢:日本福祉大学/本誌編集委員)
子どもとともに育ちあって――小規模グループケア3年間の取り組み(飯田舞:大阪福祉事業財団すみれ乳児院)
地域小規模児童養護施設「フォワィエ」の取り組みを振り返って(西川信:児童養護施設名古屋文化キンダーホルト)
地域小規模児童養護施設のいま(吉川卓:児童養護施設調布学園)
地域小規模児童養護施設における実践と課題(武藤素明:児童養護施設二葉学園)
○特集 児童虐待防止法制定10年で見えてきたもの
児童虐待防止法制定から10年を振り返って(平湯真人:弁護士)
親権制度見直し研究会で何が議論されたのか(吉田恒雄:駿河台大学法学部)
初期対応強化だけでは虐待は防げない。今こそ虐待予防の総合的な対策を
川崎二三彦(子どもの虹情報研修センター)
川島順子(東京都小平児童相談所)
山口薫(児童心理療育施設桜学館)
佐藤隆司(神奈川県県北地域児童相談所/本誌編集委員)
【司会】二宮直樹(愛知県西三河児童・障害者相談センター/本誌編集委員)
児童虐待防止最前線 児童相談現場が抱える苦悩と課題
南雅也(奈良県中央こども家庭センター)
川島順子(東京都小平児童相談所)
佐藤隆司(神奈川県県北地域児童相談所/本誌編集委員)
○特集 発達障害を再考する
発達障害が示す特性を日常生活で活用すること(田中康雄:北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
現場で発達障害を理解するための心理学入門(二宮直樹:愛知県西三河児童・障害者相談センター/本誌編集委員)
子どもたちがよりよい社会生活を営めるように施設ができること(安部慎吾:児童養護施設唐池学園)
発達障がいのある子どもと母親とのかかわり(平野由衣:母子生活支援施設サン・フラワー華陽)
○当事者の語り
自分の人生が好き(佐野優)
いまだかつてない「わたし」の語り(中村みどり)
○海外の社会福祉事情
海外の社会的養護はどうなっているのか(渡邊守)
ルワンダの子どもたちといっしょに(内藤久美子)
○現場実践レポート
保育所から乳児院を立ち上げて思うこと(金澤由紀)
児童養護施設職員の専門性とは(宮崎正宇)
子どもとのかかわりの中で感じていること(藤田哲也)
長くやってこそ楽しき児童福祉司稼業かな(福岡久忠)
なぜ、職員は辞めるのか(黒田邦夫)
○研究報告
児童虐待防止対策からみえる家族にとっての子どもの存在(加藤洋子)
子どもからの相談にみられる自己承認・自己決定の現状と意味(遠藤由美)
児童養護施設職員の社会的位置と働き続けるための条件(堀場純矢)
○エッセイ
私の宝物(都丸文子)
映画「葦牙」と子守歌(藤澤昇)
○書評
『修道士カドフェル・シリーズ』(大関しほり)
『なぜこんなに生きにくいのか』(牧真吉)
『失はれる物語』(矢島一美)
『子どもの貧困白書』(中村強士)
『児童養護と青年期の自立支援』(吉村美由紀)
編集後記・次号予告
前書きなど
編集後記(佐藤隆司)
今年は児童虐待防止制定から10年の節目の年です。
振り返れば、親権者の親に施設入所、里親委託措置等の必要性を説くものの、児童福祉法第27条第4項「児童に親権を行う者(第47条第1項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない」の“壁”は厚く、一部の親の「俺達の世界じゃ、人にモノを頼む時は土下座するんだよ!」「子どもを施設に入れるんだったら、私は死にます。死んだら、あなたたちの責任ですからね!」などの恫喝に児童相談所職員は子どものため、親のため、未来の親子関係のため、朝晩、家庭訪問しては「お父さん、お願いしますよ!」「お母さん、一緒に今後のことを考えましょう!」などと、繰り返し説明したりしました。
しかし、児童虐待の防止等に関する法律の成立・施行後、状況は一変します。虐待対応に求められる第一要件は子どもの安全確保と、安全確保のためには躊躇なく職権発動して即時保護する姿勢です。立入調査、家庭裁判所に施設入所等の承認を求める段取りは、今は瞬時に判断して実行する状況に変化しました。
今後、虐待防止のための改革はどんどん推し進められます。しかし、虐待防止のための本質は、特集にある意見それぞれに見え隠れします。
養問研と児相研の共同編集誌『子どもと福祉』第3号の特集では、児童虐待防止法制定からこれまでの10年を振り返ることとし、同じく制度化10年目の児童養護施設の地域小規模化の現状と課題、発達障害を取り上げることとしました。また、研究報告、当事者の語り、エッセイ、現場実践レポート、書評、海外の社会福祉事情……とテンコ盛りの1冊に仕上がりました。
最後に、編集委員一同、明石書店第3編集部の大野祐子さんには、適切なご助言をいただくとともに、多大なご支援を賜りましたことを感謝申し上げます。