目次
序文
概要
第1章 序論
第2章 知識普及と国際流動性の影響
第1節 なぜ流動性が重要なのか
第2節 何が流動性を誘発するか
第3節 流動性はどのように知識を普及させるか
第4節 知識移転はどの程度起こり得るか
第5節 受入国への効果
第6節 送出国への効果
第7節 高度入移民と世界的厚生
第8節 要約
第3章 流動性とその影響——データによる実証分析
第1節 流動性パターン
第2節 流動性の影響
第3節 将来展望——研究開発の国際化
第4節 要約
第4章 現行政策アプローチ
第1節 流動化戦略
第2節 政策の概観
第3節 国家レベルの政策に関する論議
第4節 市民社会組織における政策
第5節 要約
第5章 将来展望——流動化政策
第1節 政府介入への合理的根拠の確立
第2節 流動化政策の役割
第3節 政策一貫性
第4節 要約
訳者あとがき
Box
Box2.1 OECD加盟国の労働市場における外国人材の実績——最近の傾向
Box2.2 外国人移住者の労働市場への影響
Box2.3 オープン・イノベーション
Box2.4 国外移住が発展途上国にもたらす幅広い影響
Box2.5 頭脳回流——韓国のICT産業
Box2.6 人材ネットワーク
Box2.7 吸収力指標としての革新能力
Box2.8 ディアスポラ・ネットワークの機能
Box2.9 発展途上国でのディアスポラ支援
Box3.1 データの利用可能性と制限
Box3.2 学者及び科学者の移住——最近のオーストラリアの事例より
Box3.3 ヨーロッパにおける流動化姿勢——2005年世論調査「Eurobarometer」
Box4.1 他の流動化推進政策オプション
Box4.2 流動化政策事例(1)
Box4.3 流動化政策事例(2)
Box5.1 市場の失敗
Box5.2 現行流動化政策に対する評価
Box5.3 イノベーション推進政策措置
Box5.4 移住と開発——ヨーロッパに向けた政策提案
表
表2.1 過去10年間における博士号取得者の対米移住要因、2003年
表2.2 高度外国人材の受入国への効果
表2.3 高度人材の国外移住が送出国に及ぼす効果
表2.4 国家条件とディアスポラ特性に基づくディアスポラ関与水準
表3.1 他OECD加盟国在住のOECD出身国別高度人材数、2001年
表3.2 博士学位取得者に占める科学分野専門家の割合、2000年近辺
表3.3 韓国における外国人留学生、2006年
表3.4 日本における外国人留学生、1985〜2006年
表3.5 中国における外国人留学生、2005年
表3.6 10年以上の滞在期間にある国外出身者の割合
表3.7 新規博士号取得者における取得翌年に帰国の意思を示す者の割合
表3.8 アメリカにおける1998年の科学・工学分野での博士号取得者で、1999〜2003年の各年に在留していた一時ビザ保有者の割合
表3.9 高度人材のアメリカへの流入
表3.10 主要科学・工学系文献出版国/地域に関する国際共同指標、1992〜2003年の主要年
表3.11 イギリスにおける国際共同研究の変化、1996〜2000年から2001〜2005年の期間
表3.12 バイオロジカルサイエンス分野における国内研究と共同研究の引用頻度にみる平均的影響、2001〜2005年
表4.1 流動化戦略
表4.2 科学技術人材の招致と経済インセンティブ
表4.3 科学技術人材流入促進に向けた入移民政策
表4.4 科学技術人材流入促進に向けた国外取得資格の認証
表4.5 科学技術人材流入促進に向けた社会・文化的支援
表4.6 国外研究推進政策(科学技術人材の流出)
図
図3.1 OECD加盟国における本国出身者に占める出移民の割合、2001年
図3.2 出身国別国外居住者の技能水準別分布状況、2001年
図3.3 OECD加盟国出身高度国外居住者の主要OECD居住国、2001年
図3.4 OECD加盟国における博士学位取得入移民の割合
図3.5 OECD居住国別OECD加盟国別及び非加盟国出身高度移住者の割合、2001年
図3.6 EU27か国及び主要国における25〜64歳の科学技術人材に占める国外出身者の割合、2006年
図3.7 出身国別OECD加盟国在住高度出移民数、2001年
図3.8 OECD加盟国における15歳以上の博士学位取得入出移民数、2001年
図3.9 国外出身者の博士号取得者総数に占める割合、2001年
図3.10 高度人材の対OECD国外移住率、2001年
図3.11 本国外で登録されている学生数、1975〜2005年
図3.12 OECD加盟国において博士課程に在籍する非OECD諸国出身留学生数、2004年
図3.13 先進研究プログラムに携わる外国人留学生、2005年
図3.14 教育分野間での外国人留学生受入状況、2005年
図3.15 アメリカの技術的中枢地での移民設立企業、1995〜2005年
図3.16 アメリカ滞在の意思を持つ科学・工学分野外国人博士号取得者、2000〜2003年
図3.17 科学・工学分野でのアメリカの大学からの博士号取得韓国人における卒業後の計画
図3.18 イギリスの大学の終身在職権を有する研究者における国/地域別割合変化、1995/96〜2003/04年
図3.19 国外研究暦を持つ頻繁に引用される研究者の割合
図3.20 外国人との共同発明による特許割合、2001〜2003年
図3.21 アメリカにおける大学上位200研究機関と海外研究機関との研究者による科学・工学系共同執筆文献(総文献数)、1998〜2001年の分野別割合
図3.22 アメリカでの外国人留学生の科学・工学分野博士号取得者数と出身国の対アメリカ学術協業との関係
図3.23 「超伝導量子コンピュータ分野」における共著ネットワーク
図3.24a 研究開発集約度、2006年における順位
図3.24b 研究開発集約度、1996〜2006年の期間における年平均実質成長率
図3.25 総研究開発支出額のGDPに対する割合(GERD)、2006年における順位
前書きなど
研究開発・革新活動への参加国増大を背景に、高度専門人材の国際流動性は規模を拡大させ複雑性を増大させている。流動人材は国境を越えて直接的、間接的に知識を普及させるが、これは世界規模でのイノベーションを誘発することにより送出国、受入国双方に利益となり得る。また人材流動性が労働市場の国際化・統合化を先導していることは明らかであり、今や世界中で人材争奪戦がイノベーション政策を左右する状況にある。しかし、ほとんどの国が一通りの流動化支援・推進政策を提供してはいるものの、特殊的かつ一貫した流動化戦略を備えた国はほとんど存在しない。他方、多くの国がその求める高度専門人材蓄積を等しくする状況にあり、現在及び将来において、各国の需要超過補完のための国際人材フローへの依存はリスクを孕んでいると言える。各国にとって、専門人材の供給制約につながる政策的欠点の克服と、イノベーション及び科学的取組みを支援できる十分に寛容な環境の整備が、重要な政策課題となっている。