目次
はじめに――改定保育指針実施にとまどいを感じている保育士のみなさんへ(久田敏彦)
1 乳幼児期の子どもの発達と課題
・発達のみちすじを学びその時期にふさわしい援助・働きかけを(野村朋)
[年齢別]子どもの発達のみちすじ(野村朋)
【0~6か月】社会的な存在へのはじめの一歩
【6か月~1歳】ものと人、ことばを結びつけはじめる
【1歳】人間独自の能力を獲得する発達の節目
【2~3歳】行きつ戻りつ揺れ動きながら成長
【4歳】「~シナガラ~スル」力を土台に自制心を育てる時期
【5~6歳】幼児期の総仕上げ 「学力」の土台を築く
2 豊かな実践のための保育課程づくり
・これまでの実践をさらに充実させよりよい保育をめざす(長瀬美子)
[保育課程づくり]
1.保育課程:発達の連続性を踏まえ長期的な見通しをもって(長瀬美子)
2.指導計画:保育士の目で保育課程を具体化する(長瀬美子)
3.食育の計画:人とのつながりを大切に食を楽しむ計画をつくる(三上かおる)
4.個別支援:週1回の小集団保育で発達を促す(岡喬子)
・保・幼・小の連携──それぞれの独自性を大切にしながら進める(長瀬美子)
・保育士の専門性に支えられた子育て支援を(杉山隆一)
・保育の質を高める自己評価のしかたと施設長の役割(長瀬美子)
3 保育指針改定の背景と問題点
・なぜ改定されたか──その背景と問題点を探る(杉山隆一)
4 保育指針への理解をより深めるために
・幼稚園教育要領──幼児教育は改訂でどう変わるのか(長瀬美子)
・どう変わったか──改訂学習指導要領の特徴と問題(久田敏彦)
前書きなど
はじめに――改定保育指針実施にとまどいを感じている保育士のみなさんへ(久田敏彦:大阪保育研究所所長)
改定保育所保育指針が2008年3月に告示されました。告示直後から、つぎのような不安の声が聞こえてきました。
●ガイドラインではなくて告示化になったのは、どのような意味や背景があるのでしょうか?
●そのなかで大綱化とは何をさすのですか?
●発達のとらえ方はこれでよいのですか?
●保育課程は指導計画とどこがちがうのでしょうか?
●個別指導計画、食育計画の作成が強調されていますが、いったい何をどうすべきなのですか?
●保・幼・小の連携は大切ですが、どんな観点で連携するのでしょうか?
そして2009年4月からの実施です。けれども、そうした不安は解消されたとはいえません。それどころか、実際に実施という段階になってとまどいを感じているという声も聞こえてくるようになりました。
●ひとまずつくってみたけれど、保育課程ははたしてこれでいいのか?
●自己評価と研修の充実はどのようにするのですか?
●評価や研修にかかわって、園長・主任保育士はいかにその役割を発揮するのでしょうか?
●保護者支援をどう具体的に展開していったらいいのでしょうか?
●保育要録の記述のしかたは、小学校との連携からみてどのように工夫すればいいのでしょうか?
わたしたちは、このような多くの人々の不安やとまどいに対して、なるべくわかりやすく応答できるものが必要だと考え、本書をつくることにいたしました。もちろん、応答のしかたは1つではなく、もともとは多様であるにちがいありません。保育所保育指針を金科玉条にしてこれを解説するという応答のしかたもありえるわけです。けれども、本書は、単なる解説書ではありません。そうした仕事は、保育指針改定後に数多く刊行されているものに譲りたいと思います。
というのは、わたしたちは、改定保育指針にはやはり問題があるととらえているからです。
けれどもまた、問題があるからといって、改定保育指針を終始批判するだけで事が足りると考えているわけでもありません。単なる批判という応答のしかたは、解説という応答のしかたと同じくらい、現に目の前で生活している子どもの保育に時に無責任になる危険性をもちかねないことになるからです。
大切なのは、改定保育指針に「順応する」のではなく、それを「生かし」ながらも、なおそこに問題があるとすれば、その問題をリアルに把握してこれを子どもの発達を保障する営みを発展させる契機に読み替えていくことなのだと思います。そして、そのことは、蓄積されてきた保育の実践と研究の成果を踏まえてさらにそれを発展させることと重ならないわけにはいかないはずです。本書は、そのような判断のもとに編集したものであります。「子どもの最善の利益を考える」という副題をつけた趣旨もここにあります。
編集は、大阪保育研究所が担うこととしました。
大阪保育研究所は、国際児童年(1979年)の「未来の子どもたちに、考えうる最良のものを残そう」というスローガンを受けとめて、保育・学童保育の運動と実践と研究に参加する多くの人々の要求と言葉の正しい意味での浄財によって1980年に設立された研究機関です。研究所は、常設の研究部門としては「子どもの発達と保育内容」「保育制度・政策」「障害児保育」「学童保育」の4部門から成り立っていますが、この常設部門の枠を越えて、昨年から部門横断的に改定保育指針に関する研究会を重ねてきました。本書は、この研究会に参加した所員を中心にそれぞれの専門の立場と責任から執筆いただいものであります。なかでも、長瀬美子さんと杉山隆一さんに執筆と編集の中心的役割を担ってもらいました。編集作業には事務局の前田美子さんに持ち前のバイタリティを発揮して頑張ってもらいました。
目次をみていただければ一目瞭然かと思いますが、本書は、改定保育指針に不安ととまどいを感じておられる多くの保育士の要求に応えるものになっています。ぜひとも積極的に活用していただければと切に願っています。さらに、読者のみなさんから忌憚のないご意見をいただければ、望外の喜びであります。
最後になりましたが、出版事情が厳しいなか、本書の出版を快くお引き受けくださり、大阪での第41回全国保育団体合同研究集会に合わせて刊行するために多大な労をおとりいただいた明石書店のみなさんに感謝申し上げます。
2009年7月 合研を目前にして