目次
プロローグ——古代出雲の“影”
凡例
第一章 西国で広がる出雲の神々
1 オオナモチ、火山島を造る——大隅
2 大陸との交易を求めて——筑紫
3 道後温泉伝承とフシギな土器——伊予
4 鉄をめぐる神々の争い——播磨
5 弥生鉄器同盟——丹後
6 オオナモチ、「丹の湖」を開削——丹波
第二章 日本海の盟友
7 鉄と玉と出雲流墳丘墓——越前
8 白山を仰ぐ日本海ネットワーク——加賀
9 国引き現場にオオナモチの御子神——能登
10 出雲流墳丘墓追う東海勢と大和勢——越中
11 ヒスイの美姫とオロチ伝承——越後・佐渡
第三章 東国へのまなざし
12 抗戦・逃亡の神、タケミナカタの出自——信濃
13 アメノホヒの末裔と出雲系神社——武蔵周辺
14 帰って来たオオナモチとスクナヒコナ——常陸
第四章 大和を囲む国の出雲
15 共有する神々の舞台——紀伊
16 出雲と大和をつなぐ国——山城
17 瀬戸内ネットワーク——摂津
第五章 古代国家の形成——大和
18 邪馬台国と出雲
19 古代都市・纒向と三輪山の暗闘
20 大和で活躍、野見宿と土師氏
21 大和の中の出雲の神々
22 今もつづく御綱祭りと
エピローグ——古代出雲の正体
おわりに
巻末資料
四隅突出型墳丘墓一覧
主な引用・参考文献
主な探訪問い合わせ先ガイド
前書きなど
プロローグ——古代出雲の“影”
私は仕事のついでに列島各地の歴史や文化を訪ね、酒肴を味わい、地元の方々とのおしゃべりを楽しんできた。そうした中、各地に古代出雲を連想させる痕跡——私はそれを古代出雲の“影”と呼んでいる——があることに気がついた。私は大の出雲ファンで、中でもナゾにみちた古代出雲に深い関心を持ち、出雲の中をくまなく探訪した。その出雲が、出雲の外にも実に豊富にあったのだ。はたして、それは歴史上の事実、実像だろうか。それとも人々の想像が伝承となった、虚像だろうか。
(…中略…)
私にとって、出雲は神話と考古学と文献史学が結びつく可能性が高い興味深い地域であった。そして一連の考古学的大発見により、出雲の日本古代史における存在感はふくらみ、出雲神話は何らかの史実を示すとの見方も指摘され始めた。神話学と文献史学と考古学が古代出雲像に収斂し始めたのだ。
そこから得られる古代出雲像は、中央からではなく地方から見た、征服する側ではなく征服される側から見た古代日本史像でもある。この視点があってこそ、複眼的・立体的な古代日本の実像が浮かび上がる。これが、私にとっての、もう一つの古代出雲の魅力である。
出雲の外に映る古代出雲の“影”を追って、読者とともに古代出雲の真相と深層に迫る旅をしようと思う。各地でさまざまな古代出雲に出会うことで、古代出雲が多様な輝きを増したと感じていただければ幸いである。この“影”を訪ねる旅は、日本の古代国家誕生のナゾに迫る旅になるかもしれない。