目次
日本語版序文
謝辞
訳者序文—「専制」「行為性」「ラディカル・ポリティクス」について
第一部 「専制から変容へ」
第1章 社会変容につながる参加の実現にむけて
(サミュエル・ヒッキィ、ジャイルズ・モハン)
第2章 参加型ガバナンスの実現にむけて—社会変容をもたらす可能性
(ジョン・ガベンタ)
第二部 参加の見直し
第3章 ラディカル・ポリティクスからの開発の見直し
(ジャイルズ・モハン、サミュエル・ヒッキィ)
第4章 変容のための空間?—開発への参加における権力と差異
(アンドレア・コーンウォール)
第三部 参加と人々の行為性—社会に根ざした開発との接点
第5章 ペルーの地域住民の参加と抵抗、「ローカル」なるものの問題点
(スーザン・ヴィンセント)
第6章 「専制」的な住民参加から生じる社会の「変容」
(真崎克彦)
第7章 住民開発組織にとっての道徳性・シティズンシップ・参加型開発とは?
(レロイ・ヘンリー)
第四部 社会変容を目指した参加の実践—国家・社会の対応
第8章 ラディカル・ポリティクスに基づく開発アプローチ
(サミュエル・ヒッキィ、ジャイルズ・モハン)
第9章 地方政府に対する発言権の確保と地方行政の変革
(ダイアナ・ミトリン)
第10章 試行錯誤を通した前進
(マーク・ワディントン、ジャイルズ・モハン)
第五部 援助機関と参加—専制と変容の狭間で
第11章 貧困削減戦略文書(PRSP)における参加
(デヴィッド・ブラウン)
第12章 既成の処方箋を超えて?
(ジェレミー・ホランド、メアリー・アン・ブロックレスビィ、チャールズ・アブグレイ)
第六部 より広い視座から「専制を超えて」
第13章 社会生活に根ざした人々の行為性と意思決定
(フランシス・クリーバー)
第14章 参加・制度変革の理論化
(アンソニー・ベビントン)
解説 開発学の生成過程(佐藤寛)
訳者あとがき—単純明快さの「専制」を超えて(真崎克彦)
著者紹介
参考文献
索引
前書きなど
日本語版序文
参加が国際開発協力のオルターナティブなアプローチとなり得るのか、という点に関しては議論が絶えることが無い。参加は周縁に追いやられた人々をエンパワーできるのだろうか? 排除や支配を生み出す権力関係を変えることができるのか、それとも「いつものやり方」を覆い隠す口実にすぎないのか? さらには、参加型アプローチが新しい形の排除や収奪につながる恐れはないのだろうか?
こうした問題提起は、『参加−形を変えた専制?』(Participation: The New Tyranny?)という挑発的なタイトルの付いた著書(編者はBill CookeとUma KothariでZed Booksより二〇〇一年に刊行)でなされたが、本書の場合は「『専制』を超えて」という副題(Participation: From Tyranny to Transformation?)が示すように、もう少し楽観的な見通しを立てている。ただし、本書は専制論を否定しているわけではない。むしろ専制論の核となる主張、つまり、周縁に置かれた人々の参加を難しくする政治や権力という大事な課題が、従来の研究や実践では避けられ曖昧にされてきたという認識を共有している。したがって、本書からも専制論の概要は学ぶことができるが、読者の方々には『参加−形を変えた専制?』も是非とも繙いていただき、参加型開発アプローチの落とし穴について理解を一層深めていただきたい。
ただし、われわれの立場は、参加は進歩的な開発アプローチとはなり得ない、という専制論の結論とは一線を画している。議論の視点を変えてみて、むしろ状況次第では、参加が真に社会変容に結び付く開発アプローチとなる潜在性があるという立場を取る。そのため本書では、開発の中で人々の行為性(agency)が発揮されるさまざまな可能性に着目し、いわゆる「参加」を、参加型農村調査法(PRA)のような開発機関の間で主流となっているアプローチとして狭く捉えず、人々によるガバナンスへの参加、NGOがさまざまなレベルで関わる社会運動なども含めた広い視野から考察している。新しいオルターナティブとしての参加はどうあるべきなのか、また、そこからどういう政策課題が見えてくるのかについて、執筆者たちは見識ある提言をしている。中でも核となるのが「シティズンシップ」という概念であり、人々が「市民性」を発揮しながら参加を進めていけるのかどうかが、今後の成否の鍵を握ると確信している。本書は、このように広い見地から参加の見直しを試みながら、参加が今後とも重視されていく上で必要となる理論的な基盤を提示している。しかし実際には、参加が「変容」的な効果をもたらしても「専制」的な要素が抜け切れない場合もあり、具体的な文脈(context)の中で個々の事例を検証していくことが大切である。「専制か変容か?」という議論はこれからも続いていくであろう。