目次
はじめに
第1部 総論
1 子ども家庭福祉の60年をふりかえって(吉澤英子)
2 児童福祉法60年の歩み(網野武博)
3 戦後子ども家庭福祉制度の変遷(柏女霊峰)
4 座談会・子ども家庭福祉の今日的課題(高橋重宏/伊達直利/山縣文治/湯澤直美)
5 子どもの権利擁護の実現に向けて(平野裕二)
第2部 各論
6 子どもの成育を保障する都市環境づくり(中山豊)
7 現代の家庭と子育て(汐見稔幸)
8 児童福祉施設・機関の果たしてきた役割(前橋信和)
9 児童虐待防止における民間団体の役割(吉田恒雄)
10 国・地方自治体が子ども家庭福祉において果たしてきた役割(才村純)
11 乳幼児を持つ保護者への支援——子育ち・子育てエンパワメントの視点から(安梅勅江)
12 保育サービスの現状と認定こども園(林浩康)
13 これからの「地域子育て支援」(杉山千佳)
14 子どもの健全育成と地域生活環境の整備(西郷泰之)
15 子育ての糸を紡ぎなおし、編みなおす子育てネットワークづくり(坂本純子)
16 地域における子ども家庭福祉の担い手(山田宜廣)
17 ひとり親家庭の援助(松原康雄)
18 障がい児を育てる家庭への支援(高山直樹)
19 思春期の子どもたちへの支援(田中哲)
20 これからの少年非行・少年犯罪対策について考える(相澤仁)
21 子ども虐待への社会的対応の課題と展望(才村純)
22 社会的援助を必要とする子どもの自立支援(庄司順一)
23 社会的養護当事者組織の意義と役割——児童養護の当事者参加推進団体「日向ぼっこ」の活動を通して(市川太郎)
24 子ども家庭福祉における専門職員の養成(鈴木力)
資料編
子ども家庭福祉の60年・年表
執筆者紹介
前書きなど
はじめに
1947(昭和22)年12月12日、次代を担うすべての児童の健全育成を願い、画期的な児童福祉法が制定された。2007(平成19)年、同法は制定60周年を迎えた。この間、時代時代のニーズに応じて、法律が改正されてきた。子どもの権利に関する条約(CRC : Convention on the Rights of the Child)は、1989(平成元)年11月20日、第44回国際連合総会において採択された。これは人類の歴史において画期的な進歩である。この条約は子どもの人権の尊重および確保の視点から、必要となる詳細かつ具体的な事項を規定したものである。だが、現在の児童福祉法の条文の中には、「子どもの権利」「子どもの最善の利益」等の文言は登場していない。児童虐待の防止等に関する法律では、2007(平成19)年の改訂で、第1条の目的に「この法律は、(略)児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的とする」という文言が挿入された。児童福祉法の理念にも、「子どもの最善の利益」等の文言を入れるべきであると考える。
本書は、児童福祉法制定60周年を記念して、各分野の権威者に60年の歩みを考察し、今後の課題を提示していただいた、大変貴重な論文集である。12月22日・23日、児童福祉法制定60周年を記念して開催される「全国子ども家庭福祉会議」において、本書が議論の手がかりとして活用され、真の意味での「子どものウェルビーイング(人権の尊重・自己実現)」の促進のあり方を問い、かつその実現をはかる指針となるよう、心より願ってやまない。
(…後略…)
2007(平成19)年12月 高橋重宏