目次
特集のことば
【特集】異議申し立て
公正と連帯の思想と運動を(白川真澄/季刊『ピープルズ・プラン』編集長)
アメリカ化と日本的経営の変質(斉藤邦泰/人材育成コンサルタント)
階層の「再生産」としての格差と貧困をこえて(五十嵐 守/本誌読者)
抗う若者(中村 研/ユニオンぼちぼち委員長)
『ぼやき漫談』——在日のアイデンティティ(趙 博/歌劇派芸人)
「韓流ブーム」/「北朝鮮バッシング」/「嫌韓流」現象と、日本版ネオリベラル「多文化主義」の「文化政治」(宋 安鍾/金沢大学教員)
性同一性障害者の叫び(高津 桂)
老人ホームに見る老人の叫び(中村大蔵/特別養護老人ホーム園田園施設長)
塾から見た公教育の歪み(宮田 剛/個人塾主宰)
市立芦屋高校はなぜ潰されたか(深沢 忠/元芦屋高校教員)
市川市男女平等基本条例全廃!(石崎たかよ/市川市議会議員)
権力・資本は連帯労組関生の何を恐れているのか(脇田憲一/労働運動史研究者)
●いま部落解放運動を問う
部落解放運動とは何であったのか(八木晃介/花園大学教授)
歴史的決算としての同和不祥事(吉田智弥/奈良自治研センター理事)
『同和はこわい考』の二〇年を振り返って(藤田敬一/月刊『こぺる』編集人)
「不祥事」を克服して全体の人権の底上げへ(組坂繁之/部落解放同盟中央執行委員長)
[想うがままに]
人権を守る自治体の長として判決確定させた箕面市長(小寺山康男/本誌編集委員)
[世界の定点観測]——ブラジルから
新興の大国ブラジルの影と光(橘川俊忠/神奈川大学教授)
[発信]
経営責任のない行政システム——土地開発公社問題から(武藤順子/本誌編集委員)
[警世閑話]
地場産業と先端企業の融合は可能か(庄谷邦幸/大阪市立公文書館館長)
[メディア時評]
政府はテレビに口出しするな テレビよ、しっかりしろ(喜多村俊樹/ジャーナリスト)
[この一冊]
『日本近代技術の形成』中岡哲郎著(宮崎徹/法政大学非常勤講師)
『新グラムシ伝』片桐薫著(山田 勝/本誌編集委員)
◎小特集——参院選の論点を探る
生活破壊がさらに進む(山家悠紀夫/暮らしと経済研究室)
改憲国民投票法案の現段階(飯島滋明/名古屋学院大学専任講師)
「日本版ホワイトカラー・イグゼンプション」の本質(田中和夫/労働ジャーナリスト)
年金制度改革論議の方向性(蜂谷 隆/衆議院議員政策秘書)
教育再生の正体は選民思想と愛国心の強制(斎藤貴男/ジャーナリスト)
[連載]松田政男が語る戦後思想の10人(第4回)
一九六〇年代から七〇年代へ——追悼・黒田寛一、無政府共産党、レボルト社(聞き手:平沢 剛・矢部史郎)
07夏号(VOL.12)予告
編集後記
前書きなど
特集のことば
「異議申し立て(コンテスタシオン)」とは、一九六八年フランスの「五月革命」の精神をシンボライズした言葉であるが、それはフランス一国にとどまらず、同時代世界各国で同時多発的に噴出したラディカルな闘い——中国の「文化大革命」(毛沢東派の歪曲は否めないとはいえ)、チェコスロバキアの「プラハの春=人間の顔をした社会主義」、イタリアの「熱い秋の労働大攻勢」、イギリスの「ショップスチュワード(職場世話役)の復権」、アメリカの「ブラックパワー・スチューデントパワー」、日本の「全共闘・反戦青年委員会運動」、そして全世界のベトナム反戦闘争——これらの運動の共通精神でもあった。
資本主義と当時存在した社会主義の体制の差異を問わず、効率と競争を軸とし、労働の非人間性を極限化する経済成長至上主義。社会全体を覆う権威主義的位階制序列。差別と排外の社会的ダーウィニズム——これら現行社会の秩序と価値観の総体に抗して、労働者は職場民主主義・自主管理を対置し、青年学生は支配(上位)—被支配(下位)の伝統的関係性の打破・転覆を掲げ、「異議申し立て」したのである。
いま、この国の閉塞状況は四〇年前よりはるかに深まっている。労働の非人間化に加えて労働者の生存権の極限的低落。位階制序列に代わって貧富と社会的地位の格差の絶対的進行とその世襲化。そして社会的ダーウィニズムはいまや政府公認の哲学である。にもかかわらず、多数の人びとはそれに「異議申し立て」するのではなく、「競争は社会の活力を高め、敗者は能力と意欲に欠けている」とする支配階級と少数の「勝ち組」の論理を消極的・積極的に受容している。
必要なことは、「やつらの哲学」を根底的に批判する「われらの哲学」を獲得し、「やつらの世界」に抗する「われらの世界」をつくることである。これが本特集の課題である。