目次
まえがき
第1章 幼保一元化から保育一元化へ——なぜ、いま「保育一元化」か
Q1 「認定こども園」の制度とは? その問題点は?
Q2 保育所、幼稚園の制度上の違いは? また、現状は?
Q3 保育所の保育とは? 幼稚園の教育とは?
Q4 「子どもの人権」の視点に立つ「保育一元化」とは?
Q5 なぜ、いま「保育一元化」か?
第2章 保育一元化における制度の問題
Q6 行政所管の一元化は?
Q7 職員養成課程の一元化は?
Q8 職員配置基準の一元化は?
Q9 職員研修のあり方は?
Q10 給食についてどう考えるか?
第3章 保育一元化における施設運営
Q11 小学校との連携をどう進めるか?
Q12 関係機関との連携をどう進めるか?
Q13 男性保育者を増やす上での課題は?
Q14 〇歳からの保育をどう考えるか?
Q15 保護者や地域住民の参加・参画の形は?
Q16 幼稚園の「預かり保育」で大切なことは?
第4章 保育一元化における保育の原理
Q17 「子どもの人権」を大切にする保育とは?
Q18 「領域」をどうとらえるか?
Q19 「年齢による区分」「発達による区分」をどう考えるか?
Q20 「環境を通しての保育」とは?
第5章 保育一元化の保育内容
Q21 〇歳からの子どもの集団をどうとらえるか?
Q22 「文字習得」へのすじみちをどうとらえるか?
Q23 心身の健康について配慮すべきことは?
Q24 保護者とともにつくる保育とは?
Q25 子どものリズムと表現を楽しむ保育とは?
Q26 しなやかなからだ育てとは?
Q27 なぜ、生活に根ざした表現を大切にするのか?
Q28 自然と関わり、自然から学ぶ保育とは?
Q29 環境問題にどのように取り組むか?
第6章 子どもの人権を保障する保育内容の創造
Q30 「人権を大切にする心を育てる保育」とは?
Q31 障害児とともに育ち合う保育とは?
Q32 多文化が共生し合う保育とは?
Q33 保育時間の違う子どもたちへの配慮は?
Q34 ジェンダーにとらわれない保育とは?
第7章 これからの保育施設の役割
Q35 「多様な保育ニーズに応える」とは?
Q36 子育て支援のセンター的機能とは?
Q37 子どもの育ちを支える地域づくりをどう進めるか?
Q38 子どもへの虐待に気づいたときの対応は?
第8章 合同カリキュラムの実践例
田園の中の幼保合同・異年齢保育実践(京都府八幡市立有都幼稚園・有都保育園)
〇歳から地域で一緒に育ち合うなかま——「同和」保育の実践から
●資料
幼保一元化にかかわる動き/「認定こども園」の概要/「認定こども園」の認定基準に関する国の指針
前書きなど
まえがき
二〇〇六年六月「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」が可決、公布され、二〇〇六年一〇月より「認定こども園」の制度がスタートしました。戦後の幼稚園と保育所の二元体制の改編であり、幼保一元化の実現に途を拓くものとして大きな注目を集めています。私たちはこのような動きをどのようにとらえ、これからの就学前の保育・教育をどのように創造していけばよいのでしょうか。
子ども情報研究センターでは、大学教員などの研究者と保育・教育の現場の実践者が共同で、このことについて研究・討議を重ねてきました。そして、幼稚園・保育所の現場の実践者、行政関係者、保護者など、乳幼児の保育・教育に携わるすべての方々とともに「認定こども園」の問題点について考え、子どもの人権の思想に立つ「保育一元化」を実現する保育施設・保育内容を創造していく一助になればと願い、本書を刊行することとしました。
子ども情報研究センターは、一九七七年に乳幼児発達研究所として設立され、三〇年を迎えました。この間、一貫して追求してきたことは、子どもの人権の思想に立った保育・教育の理論と実践を創造することでした。このような立場から、規制緩和・自由化の一環として行われてきた「一元化」の動きは、保育の質を低下させ子どもたちの間の格差をますます拡大していくものだと私たちは考えています。そして、それに代わる選択肢として、これまでの同和保育・人権保育の成果に立った就学前の子どもたちの人権保障の制度と実践について具体的に本書で提案します。
第一章では「認定こども園」に至る政策の動きを分析するとともに、私たちの求める保育一元化とは何かを提言します。第二章では制度、第三章では施設運営について、一元化のなかでどのような動きがあり、何が問題かを明らかにしています。そして、第四章では私たちがもとめる保育一元化の保育原理を、第五章では保育内容を提案します。さらに第六章では人権保育としての保育内容を、第七章ではこれからの保育施設の役割について提案します。最後に資料として、合同カリキュラム実践例、「認定こども園」概要等を収録しています。
本書は幼稚園・保育所の現場で活用していただくことを考え、Q&A方式でそれぞれの項目についてコンパクトにまとめています。実践の合間に手にとっていただければ幸いです。
本書は便宜上、堀正嗣が編者になっていますが、各執筆者、センター事務局、関係者の努力により完成したものです。すべての皆さんにお礼を申し上げます。
子ども情報研究センター副所長
堀 正嗣