目次
第4版の序文
日本語版刊行に寄せて
Part1: 臨床評価
1 診断分類──概念的問題と実際の研究成果
2 臨床評価の進め方と診断の進め方
3 親と子との診断面接
4 疫学的研究における事例の同定
5 評価尺度
6 心理検査と観察
7 臨床評価における応用科学的な考え方
8 子どもたちの証言
9 家族面接──理論と実践の問題
10 身体の診察と検査
11 臨床神経生理学
Part2: 精神病理への影響
12 正常・異常な発達の遺伝学
13 分子遺伝学および染色体の異常──認知と行動との因果関係
14 脳障害
15 子どもに不利益をもたらす慢性的に持続する逆境要因
16 文化、民族性、社会と精神病理
17 急性ライフストレスの役割
18 死 別
19 発達と精神病理
20 児童虐待
21 子どもの性的虐待
22 入所施設ケアと里親養育
23 養子縁組制度
24 児童青年精神医学の歴史
Part3: 臨床症候群
25 多動および注意欠陥症候群
26 行為障害および反抗性障害
27 物質使用・乱用──疫学、薬理学的考察、マネジメントのための検証と提言
28 物質使用・乱用──そこに至る原因に関する考察
29 感情障害
30 不安障害
31 適応障害
32 心的外傷後ストレス障害
33 自殺と自殺企図
34 神経性無食欲症と神経性大食症
35 強迫性障害
36 チック障害
37 統合失調症とその近接の障害
38 自閉症スペクトラム障害
39 発話と言語の障害
40 読字および他の学習困難
41 精神遅滞
42 人格と疾病
43 人格障害
44 性同一性障害
45 哺育障害と睡眠障害
46 乳幼児の愛着障害
47 児童期の尿と便のおもらし
48 身体疾患および障害の精神医学的側面
49 児童青年期におけるHIV感染症(AIDS)の精神医学的側面
50 感覚障害の精神医学的側面
51 母親の産褥期精神障害の乳幼児への影響
Part4: 治療法
52 予 防
53 行動療法
54 うつ病と不安の治療における認知行動療法的アプローチ
55 問題解決と問題解決療法
56 ペアレントトレーニングプログラム
57 家族療法
58 個人および集団精神療法
59 薬物療法とその他の身体的治療
60 非行少年の処遇
61 集中治療について──入院、デイケアおよび訪問治療
62 小児科医からのコンサルテーション
63 地域における児童青年期の専門メンタルヘルスサービス
64 非医療現場の臨床
65 1次医療機関(プライマリケア)における精神科医療
66 遺伝カウンセリング
67 重度精神遅滞を持つ児童青年期の子どもたちに対するサービス
68 支援教育への取り組み
69 サービス施策における民族と文化に関する課題
70 子どもの保護
71 子どもの心理社会的問題に関する法律
監訳者あとがき
索引
前書きなど
監訳者あとがき
この児童青年精神医学の教科書は、約10年弱おきに、これまで4版が改訂出版されています。この第4版では、Part1は全体概念や方法論が、Part2は精神病理に影響を及ぼす多くの要因が、Part3で障害・症状の各論が、Part4で治療・対応が書かれています。イギリスを中心とした児童青年期精神医学の堅実な発展に、凛とした学問への姿勢がうかがわれます。このような態度こそ見習うべき最大の利点でしょう。
一方、最近わが国でも、子どもの精神障害や精神保健に対する、学校関係者や子どもを見守る関係者の関心はこれまでになく高く、また医学部学生や若い小児科医・精神科医の関心も強いものがあるように感じられます。このような時期にこそ、最もよくまとまった子どもの精神医学・精神保健関係の教科書が必要とされるでしょう。しかし、残念ながら、このレベルの教科書を作るには、わが国の状況はまだ少し力不足かもしれません。この2つが、第4版翻訳の主な動機となっています。
とはいえ、原書は1224ページからなる大書です。翻訳には多くの協力者が必要となりました。そこで、日本小児精神医学研究会(JSPP)会員の先生を中心として翻訳をお願いしました。また日本小児精神医学研究会では、発足20周年の記念事業の一環として翻訳事業を決めていただき、翻訳がスタートしました。
翻訳に際しては、日本語として読みやすいように心がけました。訳注も必要なところには記しました。また、さらに翻訳版をきっかけにオリジナルの論文にも触れる機会があろうと思われましたので、専門用語にはできるだけ英語表記を付記し、多くの固有名詞などはそのまま英語表記にしました。また印刷中の論文でその後出版されたことがわかったものは本文中に発表年を記しました。なお、各章の訳者により、表記基準が若干違うところもあるかと思います(イタリック体やコーテーションマークの付け方など)。また、あえて訳語を統一していないところもあります(例:traumaは「トラウマ」ないし「心的外傷」と、parent trainingは「親訓練」や「ペアレントトレーニング」と訳されています)。これらは、適宜読みやすくするための配慮で、この点はお許しをいただければと思います。
翻訳作業におきましては、原文の内容が難しいところもたくさんあり、また専門分野も広範に亘るため、かなりの章で、多くの先生方に協力して訳していただきました。さらに、校正に際しても、翻訳者以外のたくさんの先生方に見直しをお願いし、貴重なご助言やご教示をいただきました。紙数の都合上、ご協力いただきましたすべての先生方のお名前を記せませんが、この場を借りまして、ご協力いただきました先生方皆様に心よりお礼を申しあげます。とはいえ、まだまだ不備な点があるかと思われます。それらはすべて監訳者2人の責任です。お気づきの点がありましたら、ご教示くださいますようお願いいたします。
2007年3月
長尾圭造
宮本信也