目次
はじめに(堀 正嗣)
第1章 格差社会からつながる社会へ
おとなからひたすら守られるなかで将来のための力を蓄えるという、その大いなる錯覚(浜田寿美男)
高校生の豊かな関係づくりを支える場——松原高校におけるピア・カウンセラーの取組み(ちょんせいこ)
第2章 子ども情報研究センターの歩み
1 乳幼児発達研究所設立の目的とその理想(鈴木祥蔵)
2 乳幼児発達研究所の切り拓いたもの(堀 正嗣)
3 子ども情報研究センターへの名称変更と活動の発展(田中文子)
第3章 子どもの人権が守られる社会を求めて——子ども情報研究センターの現在の活動
月刊「はらっぱ」(大森順子)
研究部門(堀 正嗣)
ユアボイス(宇治野崇弘・末廣隆幸・楊井利恵)
ファミリー子育て何でもダイヤル(小谷訓子)
親と子のふれあい広場「はっぴいポケット」(奥村仁美)
チャイルドラインOSAKA(今井美樹)
子ども家庭相談室(橋本暢子)
子どもとあそびのネットワーク(南田安紀子)
子ども家庭サポーター事業(山崎秀子)
子育て支援ネットワーク(山本瑛子)
第4章 子どもの権利条約批准10周年、これから
座談会『“チョイ”元子どもが語る子どもの権利』
おわりに(田中文子)
●資料 子ども情報研究センター30年の歩みと子ども関連ニュース
前書きなど
はじめに
社団法人子ども情報研究センター(以下「センター」)は今年で設立三〇年になります。本書はそれを記念して、これまでのセンターの歩みを振り返り、現在の活動を整理し、将来を展望することを目的に編集したものです。
センターの活動は、格差社会の中で私たちはどのように生きるべきなのかという根源的な問いへのひとつの答えを提供していると私たちは考えています。そのキーワードは「つながり」です。子どもは人と人とをつなぐ存在です。そして、子どもの人権を守る活動とは、子どもたちによって取り結ばれる人と人との絆を紡ぎだす活動です。「共同子育て」、「共生保育」、「子育ち支援」等の言葉は、このようなつながりを表現するためにセンターが日本ではじめて使い始めた言葉です。こうした「つながり」の意味を多くの人たちに考えていただきたいと思ったことが本書の出版を決意した第一の理由です。
本書の出版を決意した第二の理由は、子どもの人権を守る活動を日本各地で展開している人たちにとってセンターの活動が参考になると考えたからです。センターは研究や雑誌の発行・講座開催などを通して、保育、子どもの人権についての情報を発信することを主たる活動としてきました。最近は子どもの権利を守るための実践活動としてチャイルドラインなどに取り組んできました。すべて収益にはつながりにくい事業です。にもかかわらず、今日まで活動を継続し、ここまで発展させることができたということは驚異的なことです。このようなセンターの活動を発信することが、子どもの人権を守る活動に各地で取り組んでいる人たちにとって、勇気づけや参考になるのではないかと考えたのです。
第三に私たちは、本書を通して、子どもの人権を守る活動に参加することの喜びや幸せを多くの人に知って欲しいと思っています。そして、本書を読まれた方の中から私たちの活動やそれぞれの地域の子どもの人権活動に参加してくださる方が生まれてくることを願っています。
次に本書の構成について触れておきます。第一章はセンターの活動を深く理解しご協力いただいてきた浜田寿美男さん、ちょんせいこさんに、子どもの人権を実現する活動をしていく上で、いま求められる視点は何かということについて執筆していただきました。浜田さんは「もっぱら守られる存在」「もっぱら力を身につける存在」として子どもを無力化していく子ども観からの脱却の必要性を指摘されました。ちょんさんは、「豊かな関係、豊かな社会は、私たち一人ひとりが本来持つ力を合わせれば創ってゆけるもの」と指摘しています。本書全体の基調となる思想を、お二人の指摘から読み取っていただければと思います。
第二章はセンターの歩みを、センターの活動に所長・副所長としてかかわってきた三人が振り返り、その意味を整理しました。
第三章はセンターの多岐に渡る現在の活動の実際とその魅力を、各部門の中心スタッフが執筆しています。
第四章は児童養護施設やオンブズパーソン、不登校新聞にかかわっている若者の座談会を収録しました。子どもの人権について真剣に向き合っている若者たちが、これからの私たちに求められるものについて提言しています。
センターは「ともに希望を語る」場所です。本書を読まれた皆さんが、ぜひセンターの活動に参加してくださることを願っています。
二〇〇七年一月
子ども情報研究センター副所長
堀 正嗣