目次
第1部 通告とスクリーニング
第2部 関与
第3部 面接
第4部 初期のアセスメント
A:虐待全般
B:ネグレクト
C:身体的虐待
D:性的虐待
E:心理的マルトリートメント
F:リスク・アセスメントと安全性の評価
第5部 家族のアセスメント
A:子ども
B:親および養育者
C:家族
第6部 サービス計画
第7部 介入
A:子ども
B:親または養育者
C:家族
第8部 経過の評価と終結
第9部 法律問題と倫理問題
第10部 子ども保護の実務
付録
前書きなど
序 文
子ども虐待とネグレクトの分野で仕事をすることには多くのむずかしい問題がある。情緒的には、傷ついた子どもやもがく家族を目の当たりにするのは苦痛である。家族への実質的な援助をおこなう資源は不足しがちであるし、たとえ適当な資源があっても、子どもへのマルトリートメントを生じさせる複雑な状況を変えるのは大きな挑戦である。この分野の性質として、ソーシャルワーク、メンタルヘルス、医療、公衆衛生、看護、警察、法制度、教育など、広い専門領域が関係することになる。しかし、それぞれの領域の専門家たちも虐待やネグレクトを受けた子どもやその家族について仕事をするための十分な準備ができていないことが多い。さらに、子ども虐待やネグレクトの分野ではたらくには、一つの領域の専門家といえども、関連領域についてたくさんのことを学ばなければならない。たとえば、小児科医には法律の知識が必要になるし、ソーシャルワーカーは医療について知らなければならない。こうした状況において、重要な意思決定がなされなければならないのである。われわれは家族につぎのように言う。「あなたのお子さんは虐待(あるいはネグレクト)を受けています」「あなたには助けが必要です」「お子さんはあなたのもとでは安全ではないので、どこかに移す必要があります」「お子さんがあなたのもとに戻ることはできません」。
われわれは本書が、前述のような難問に直面している専門家に役立つ、実際的なガイダンスとなることを望んでいる。実務において多忙な日々を送っている専門家にとって、多くの複雑な問題を十分に検討し、学ぶのはけっして容易なことではないだろう。本書は一つの妥協の産物である。さまざまな領域の、すぐれた専門家の助けを得て、広範な臨床的問題の中でもっとも重要な情報に優先順位をつけ、読みやすく、役立つものとなるように努めた。実務にたずさわる忙しい専門家を念頭におき、重要な情報を簡潔に述べるよう努力した。より詳しい情報を求める読者のために、多くの章には参考となる図書や論文、その他の資料が示されている。
われわれはどのようにして本書の内容を決めたのであろうか。まず、重要と考えられたトピックの長いリストを作成した。このリストを、子ども虐待とネグレクトの分野の約30名の専門家(付録1)に送り、それぞれのトピックの重要度を評価してもらった。また、このリストから落ちている、重要なトピックについて推薦してもらった。こうした作業をへて、最終的な構成が決まった。あらゆる事項を取り上げるのは不可能であり、むずかしい決断を下さなければならなかった。もちろん、何を取り上げ、何をはずすかということに意見の一致をみないこともあったが、本書はこの分野のかなりの数の専門家の合意を得たものといえる。われわれは読者の皆さんからのフィードバックを期待しているので、ご意見をお寄せいただきたい。
本書のような企画には多くの人の協力があり、われわれはそれらの方々に感謝申し上げたい。まず、セイジ出版社のテリー・ヘンドリックス(Terry Hendrix)の熱烈な支援に感謝する。彼は、本書が重要なニーズに応じるものであることをすぐに理解し、出版に同意してくれた。同社のキャシー・ガヴリリス(Kassie Gavrilis)とダイアナ・アクセルセン(Diana Axelsen)のおかげで楽しく作業をすすめることができた。本書に原稿を寄せてくれた執筆者たちはすばらしい仕事をしてくれた。膨大な情報を数ページに凝縮するのはおどろくほどむずかしいことであり、その申し分のない仕事に感謝の念でいっぱいである。本書の企画を注意深く検討し、的確な助言をしてくれた多くの専門家にも御礼を申し上げる。メリーランド大学のすばらしい同僚、ボルチモアとメリーランドのさまざまな分野の専門家、全米子ども虐待防止専門家協会(American Professional Society for the Abuse of Children)の会員が、日々、われわれの仕事を支えてくれている。ジャン・ミラー(Jan Miller)は事務的な面で貴重なサポートをしてくれた。
子ども虐待とネグレクトに関する分野には多くの難問もあるが、大きな満足と喜びもある。われわれは、本書の編集をとおして多くのことを学んだ。われわれが得たのと同様の利益を読者も得られるよう希望している。いっそう重要なことは、われわれの実践をよりよいものとする絶え間ない努力によって、子どもと家族が利益を得ることである。