目次
特集 破壊的市場主義を超えて
巻頭対談 いまや政権交代のときがきた(橘木 俊詔[京都大学教授]×森永 卓郎[エコノミスト]
「改革=生活破壊」の一〇年(山家 悠紀夫[暮らしと経済研究室])
年金と雇用と賃金、生活時間も逆転配分せよ(小林 良暢[グローバル総研所長])
二一世紀初頭の医療改革の選択(二木 立[日本福祉大学教授])
「雇用破壊」に未来は無い(成川 秀明[連合総研上席研究員])
賃金破壊に歯止めを(小畑 精武[自治労公共民間労組協事務局長])
市場社会のチェック機能と企業文化(西村 理[同志社大学教授])
広がる経済組織の選択肢(宮崎 徹[法政大学兼任講師])
「憲法改正国民投票法」の基本原理(石埼 学[亜細亜大学教授])
イタリアの改憲論の動向と憲法改正国民投票制度(内藤 光博[専修大学教授])
はぐれ組で行こうぜ!—山田昌弘著『希望格差社会』のことなど(齋藤 寛[大学教員])
被害者が加害者とされている東海村臨界事故(望月 彰[たんぽぽ舎会員])
ノスタル爺の切なさよ—「つくる会」公民・歴史教科書批判(川本 和彦[河合塾講師])
裁判員制度・刑事訴訟法の改悪に反対し、陪審制度の復活を(樺島 正法[陪審制度を復活する会事務局長])
[世界の定点観測]反日デモの実相に迫る(太安 淳一[共同通信上海支局長])
[深層]八方塞がり小泉外交(歳川 隆雄[『インサイドライン』編集長])
[発信]違いがわからない石原知事のフランス語蔑視発言(小畑 精和[明治大学教授])
[発信]朝鮮人被爆死はなぜ多かったか(米澤 鐵志[宇治平和の会世話人])
[想うがままに]ぼくらが失ったもの(小寺山 康雄[本誌編集委員])
[文化時評]魂の踊りと無機質なダンス(陣野 俊史[批評家])
[メディア時評]メディアにとって公共性とは?(喜多村 俊樹[ジャーナリスト])
[現代と思想家]転換期のいま、石橋湛山思想に学ぶ(大竹 政一[現代社会民主主義研究会])
[この一冊]『再生産について』ルイ・アルチュセール著(桑野 弘隆[専修大学非常勤講師])
[医療と現代]患者主体の医療とインフォームド・コンセント(富沢 瑞穂[医療問題研究者])
惜別 山崎春成を悼む(中岡 哲郎)
05秋号(Vol.5)予告
『現代の理論』からのお願い
編集後記
前書きなど
特集のことば
東京・六本木の“ヒルズ族”と呼ばれる、あのライブドアのホリエモンや楽天・三木谷社長、あるいはサイバーエージェント・藤田、シークエッジ・白井の両若手社長、それにヒルズ族ではないが所得番付トップの「年収一〇〇億円サラリーマン」の投資顧問会社・斉藤部長などには、確かに何か新時代の潮流を感じさせるものがある。でも、この人達、たしか藤田氏を除いてみんな東大、一ツ橋、早稲田の出身のばすだ。他方、大学にも行かない、大学を出ても会社に就職しないフリーターたちは、政府の調査によると、その八割が「年収三〇〇万円以下」である。そのフリーター第一世代も今や三〇歳代半ばに達し、ヒルズの若手社長と同世代である。
明らかに、世の中の潮目が変わり始めている。しかし、それが良い方向にむかっているのか、悪い方向なのか、まだ定かでない。しかし、この特集は悪い方位に向いているという判断に基づいて組まれている。「失われた一〇年」、「小泉改革五年」、時の政権は「改革、カイカク」と声高に叫び続けてきたが、その本質は「破壊的市場主義」政策で、その間具体的にやってきたことといえば、日本のゲートシティーともいえる六本木六丁目とそれ以外のぐちゃぐちゃの社会に破断してしまったことである。サラリーマンの大多数は、もっとうまいやり方があるのではないかと思っており、普通の民主的な政体の下では、選挙による政権交代があってもいいはずである。
この特集は、構造改革とりわけ小泉改革の「破壊的市場主義」政策に対して、それぞれの分野について精鋭の論者に登場していただき論じてもらっているが、論者たちの立場、その考え方は、「市場主義」そのものへの認識や「小泉改革」に対するスタンスについても必ずしも一致しているわけではなく、ましてやめざすべき社会改革のベクトルも共通しているわけではない。
ただひとつだけ共通しているのは、このままではこの国・この社会はダメになってしまうという強烈な危機意識である。さまざまな理論と立場から現代を論ずるのが、本誌の真骨頂であるとすれば、本号はまさにこの国の経済社会のこれからの有り様を幅広く論じたものである。