目次
まえがき(紙谷雅子)
日本の読者のみなさんへ(ナディーン・ストロッセン)(小町谷育子訳)
第1部 九・一一後のアメリカとACLU
1-1 九・一一後のアメリカ社会(東澤靖)
1 はじめに——アメリカ社会の変貌/2 愛国者法とは何であったか/3 愛国者法のもとで起こった人権侵害/4 そして国境の外では……/5 ACLUのたたかい/6 そして今
1-2 新たな差別の幕開けか?——なぜアフリカ系アメリカ人は、アシュクロフトのテロ対策法に不安を抱くのか(ACLU)(木下ちがや訳)
ローラ・マーフィーの公開書簡/1 九・一一以後——憲法で保障された自由は安全の代償か?/2 性急かつ恐るべき法律/3 「欠陥のある無責任な法律」/4 歴史はよき教師である/5 かれらは公民権運動を盗聴する/6 「われわれ」は非常に危険な状態にある/7 「暴走する司法省」/8 エドガー・フーバーの亡霊が二一世紀に出現する/9 結び——過ちを繰り返すな
1-3 遠く離れて——九・一一以後の移民の国外追放がいかに家族を引き裂き、コミュニティを破壊したか(ACLU)(木下ちがや訳)
はじめに/アハメド・アブライニン/アンザル・マムード/アンサル・モハマド/ベナマール・ベナッタ/ハレド・アブシュバエク/ハレド・アルビター/ホラム・アルタフ/モハメド・エルザタル/ナイーム・シェイク/ノール・ホセイン・ラザ/サディク・アワイド/おわりに
コラム——慈善事業と脱落者/破壊されたコミュニティ
第2部 ACLUの歴史
2-1 ACLU創立から七〇年代まで(木下ちがや)
第1章 ACLUの登場/第2章 前進と動揺の時代/第3章 従順と沈黙の時代/第4章 公民権運動とACLUの転換/第5章 ベトナム反戦運動からウォーターゲート事件へ
2-2 ACLUが取り組む現代的課題・新しい権利(上柳敏郎)
生殖の自由・中絶の権利/女性の権利、ジェンダー/権利の飛び地への挑戦/学校内の人権/知的・精神的障害者収容施設内の人権/刑事被拘禁者の人権/同性愛者の人権/貧困者の権利
第3部 太平洋を越えて
3-1 JCLUとACLU(羽柴駿)
1 日本における自由人権協会(JCLU)の設立/2 鳩山一郎とロジャー・ボールドウィン/3 沖縄問題をめぐって/4 七〇年代以降
編者あとがき
JCLUのご紹介
ACLUについて
関連年表
執筆者略歴
前書きなど
まえがき
社団法人自由人権協会(JCLU)は一九四七年、新憲法が制定された日本においても基本的人権の擁護を唯一の目的とする市民組織が必要という、当時のロジャー・ボールドウィン・アメリカ自由人権協会(ACLU)会長の示唆を受けて設立されました。
日本国憲法が自由と人権は国民の不断の努力をもって保持しなければならないと規定しているのですから、あらゆる人の自由と人権を擁護し支援するという姿勢は、私たちにも不可欠な姿勢です。JCLUは、さまざまな政治的立場を超えて市民として意見を表明し、重要な人権事件を支援しています。残念なことにその会員数はACLUに遠く及びませんが、社会の中で自分の権利主張が適切にできない人々の自由が脅かされるときはすべての人々の自由が脅かされる、との信念を共有する党派を超えた非営利組織として、日本社会の礎となることをめざしています。
ACLUは今、「自由のために立ち上がれ!」と言わなければならないほどアメリカ社会に重大な事態が発生していると判断しています。二〇〇一年の九・一一米同時多発テロをきっかけとする「愛国者法」が超党派的に制定されたこと、そこで人々の自由を著しく制限する裁量権限が政府に認められたこと、人々を監視する体制が着々と整備されつつあることが、人々の権利と自由を非常に脅かしているというのです。「自由のために」というACLUの闘いを知ることは、日本国憲法の改正についての提言がいくつもなされる予定の二〇〇五年だからこそ、自由と国家との関係を考えなければならないはずの私たちにとって、とても大切なことです。この本はそのような目的の下、ナディーン・ストロッセンACLU会長らの全面的なご協力を得て、JCLUの会員有志の方々の努力によってできあがりました。JCLUを代表してこれらの方々に厚くお礼を申し上げます。
自由と人権を擁護する私たち二つの自由人権協会の活動が、この出版によって日本社会に広く知られることを願っています。
二〇〇五年五月
社団法人自由人権協会代表理事 紙谷雅子