目次
序<br>凡例<br>第三巻 伝統のなかの都市/序(内田忠賢)<br> 1 伝統的都市<br> 2 伝統のなかの京都と諸城下町 <br> 3 近代の伝統的都市<br> 4 新しいまなざし<br>1 京の生活誌<br> 京都 町なかの暮らし(寿岳 章子)<br> 京の室町(西村國三郎)<br> 明治四十三年京都—ある商家の若妻の日記(中野 卓編)<br> 解説(村上忠喜)<br>2 城下町の風俗・民俗<br> 四谷旧事談(山中 笑)<br> 松前年中行事(高倉新一郎)<br> 秋田の昔有情(洞城庄太郎)<br> くらし<br> 1 衣食住の特色(今村 充夫)<br> 2 通過儀礼(今村 充夫)<br> 3 年中行事と地域性(小林 忠雄)<br> 4 信仰と宗教(小林 忠雄)<br> 5 民俗芸能と伝承(小林 輝冶)<br> 6 方言(砺波 和年)<br> 洞津城下旧事談——明治末〜大正初期——(堀田 吉雄)<br> 長崎風物誌(本山 桂川)<br> 解説(牛島史彦)<br>3 異国人から見た都市<br> 徳島の盆踊(モラエス(花野富蔵訳))<br> 釜ヶ崎はワタシの故郷(エリザベス・ストローム)<br> GEISHA[芸者]—ライザと先斗町の女たち(ライザ・ダルビー(入江恭子訳))<br> 歌舞伎町ちんじゃら行進曲(成 美子(ソン ミジャ))<br> 解説(若麻績明里)<br>初出書誌一覧<br>編者略歴<br>解説者略歴
前書きなど
序<br> 都市はいまや我々の生活の主要な場となった。生活のあらゆる場面にその影響を見いだすことができ、我々の生活それ自体が都市化された。都市は村落と対置される存在ではなくなった。かつて日本民俗学は、村落生活を主要な対象としつつ日本の民俗文化を究明しようとした。都市の生活は、その変化の著しさの故に相対的に軽視された。しかし、都市と村落とは本来相補的な存在であった。政治・経済・文化の中心としての都市は、村落からの人や物資の供給を得ながら地域の中心たりつづけた。したがって、日本の民俗文化を総合的に把握しようとするとき、いずれかを欠くことはできないはずであった。とりわけ都市的生活様式が普遍化してきた状況下において、村落に注いだのと同質の視点をもって都市をも把握する必要があったのである。<br> そこで、都市の民俗と生活文化とを把握するために、ここに「都市民俗生活誌」の幾つかを集めてみた。これは都市に暮らす人々の、伝統と文化が織り成す生活実態の記録である。しかも文字を用いることが容易にできた都市生活者が、自らその日常生活を記録したものである。<br> その多様な都市生活を把握するために、「都市民俗の生成」、「都市の活力」、「伝統のなかの都市」の三巻に分けることにした。それは都市を空間的・機能的・時間的側面から見ることであり、複合的・多元的な都市社会における生活を、できるだけ実態に即して把握しようとした結果である。そして、各巻の序ではそれぞれの側面から把握しようとした意図を明らかにした。また、それぞれの章には解説を付けた。「民俗生活誌」は作品そのものが一つの体系を持っているはずのものであり、一部を取り出すことは難しい。しかし、本書ではできるだけ多様な生活のあり方を示すために、あえて抄出もすることにした。そのために、解説によってそれぞれの「民俗生活誌」の性格と、抄出した意図とを明らかにしようとしたのである。<br> 都市の生活の特徴を明らかにするために、特に第三巻のうちの一章を外国人による「都市民俗生活誌」にあてた。都市はまず外国に向かって開かれた社会であり、異文化の視線にも他に先んじてさらされる。その視線を確認することによって、日本の生活文化を相対化し、世界のなかに位置づけることを意図したのである。都市が時代に呑み込まれようとしている昨今、あらためて都市に生きる人々の生活ぶりをふり返ることは、都市の新しい姿を見いだす契機になるはずである。<br><br>『都市民俗生活誌』編集委員<br>有末 賢<br>内田 忠賢<br>倉石 忠彦<br>小林 忠雄