目次
第1部 『兵庫県郷土研究』
『兵庫県郷土研究』解題・目次
第2部 予審終結決定
「予審終結決定」解題
第3部 赤松啓介年譜
第4部 赤松啓介著作目録
『科学者神戸』目次一覧
『神戸自由大学経済学ノート』目次一覧
第5部 『赤松啓介民俗学選集』総目次
前書きなど
刊行にあたって 一九八六年(昭和六一)に発表された赤松啓介の『非常民の民俗文化』(明石書店)は、民俗学はもとより、隣接する日本の人文科学、歴史学・女性学・教育学などにも大きな衝撃をもって迎えられた。非常民の視点から日本社会を射つ学問体系、あらゆる権力・権威におもねらず孤高を貫いたその生き方にも感銘の声が寄せられた。しかし、この非常民の視点が注目されるあまり、その基盤にあった赤松の方法論的模索と膨大なフィールドワークの成果は、かならずしも正当に評価されて来たとはいえなかった。本選集は、赤松の民俗学に対するこうした一面的評価を超え、その学問的成果の全体像を世に問うことを目的として編まれている。 神戸市兵庫区に居をかまえて来た赤松にとって、一九九五年(平成七)一月の阪神・淡路大震災は、長年慣れ親しんだ神戸での生活を断念させる事件であった。幸いにして、震災から受けた被害は少なかったが、震災後の整理をする過程で、赤松の周囲から、その成果の散逸をおそれる声があがり、選集刊行への準備がはじめられた。本選集に収められる未発表原稿、入手困難な論考、別巻で全面復刻される『兵庫県郷土研究』は、長年赤松が保存して来たものであり、事実上、本選集においてはじめて内容が知られるものも多い。本選集は、これまで一般的に知られていなかったこうした論考も含め、赤松啓介の民俗学が網羅されている。 編集にあたっては、専門の研究者だけではなく、初学者にも理解しやすくするために、各巻テーマごとに編集し、論考はその中で編年順に配列している。また、各巻ひとつひとつの論考について詳細な解題を付し、民俗学史の中での学説的な位置づけも行なっている。民俗学徒のみならず、赤松啓介の民俗学に関心を抱く多くの人々によって読まれることを期待する。一九九七年七月 岩田重則