目次
沿海地方・行政区画図
凡例
原著序文
第1章 古代のプリモーリエ
§1 石器時代のプリモーリエ
§2 金属器時代のプリモーリエ
§3 古代のプリモーリエについての簡単な歴史的情報
第2章 中世紀のプリモーリエ(4〜17世紀)
§4 靺鞨(勿吉)の諸部族
§5 渤海国(698〜926年)
§6 女真帝国金(1115〜1234年)
§7 13〜17世紀のプリモーリエ
第3章 ザバイカリエとプリアムーリエの発見と開拓(17〜19世紀前半)
§8 17世紀におけるロシア人によるザバイカリエとプリアムーリエの発見
§9 地域の経済開発“アムール問題”
§10 19世紀前半のロシア極東
第4章 19世紀後半のプリモーリエ
§11 農奴解放後のロシア極東:行政区画と人口
§12 19世紀後半の極東への移住
§13 極東南部の経済開発
§14 19世紀後半のロシアの対外政策と東アジアにおける国際関係
第5章 20世紀初頭のプリモーリエ(1900〜1917年2月)
§15 露日戦争前夜のプリモーリエ
§16 露日戦争時代のプリモーリエ
§17 1905〜07年のプリモーリエにおける革命的諸事件
§18 1908〜13年のプリモーリエの社会・政治生活と経済生活
§19 第一次世界大戦期のプリモーリエ
第6章 革命、内戦、干渉の時代のプリモーリエ(1917年3月〜1922年10月)
§20 2月から10月へ
§21 10月革命 プリモーリエの最初のソヴェート
§22 コルチャーク政権時代のプリモーリエ
§23 プリモーリエと極東共和国(DVR)干渉者と白軍からの解放
第7章 20世紀20〜30年代のプリモーリエ
§24 内戦と干渉後のプリモーリエの経済復興
§25 30年代のプリモーリエの経済発展
§26 東アジアの国際関係システムにおけるプリモーリエ
第8章 大祖国戦争時代の沿海地方 1941〜45年
§27 危機に瀕する祖国
§28 すべてを前線のために、すべてを勝利のために!
§29 日本との戦争
第9章 20世紀後半の沿海地方
§30 沿海地方の人口
§31 沿海地方の経済発展
§32 50年代半ば〜80年代のプリモーリエの社会・政治生活
§33 沿海地方とアジア太平洋地域の国際関係
第10章 アジア太平洋地域の国際関係秩序における世紀の狭間のプリモーリエ
§34 世界的及び地域的発展の新しい動き:“冷戦”から多面的協力へ
§35 ロシアの国際関係構造におけるプリモーリエ
§36 地域協力プロジェクトにおけるプリモーリエ:潜在能力と展望
補章
1 プリモーリエの教育、科学、文化(19世紀60年代〜20世紀)
2 プリモーリエの民族史
原注
訳者あとがき
用語に関する注記
沿海地方憲章
前書きなど
「祖国の歴史の学習に対する新しいアプローチに基づいて、歴史教育カリキュラムの要求も考慮に入れて作成された」本書には、おおよそ次のような意義があるのではなかろうか。 それは、ソ連邦崩壊後の新たな状況のもとで、現在ロシアで進められている教育改革の方向性とレベルの一端を、歴史教育の内容とあり方(方法)を通してうかがい知ることができるということである。本書は、いわゆる全国版の国定教科書ではなく、ロシア沿海地方で独自に導入された、沿海地方行政府・国民教育局推薦の自由選択の「地域史」教科書である。これが、「歴史の見直し」のなかで書き直された必修の国定教科書「ロシア史」(ロシア連邦教育省推薦)と併存している。 現在、沿海地方を含む11の地方(クラーイ)と州(オーブラスチ)で、“региональныйкомпонент(地域の成分)”と呼ばれる郷土誌学(歴史・地理)が導入されているが、郷土や郷土的生活共同体への愛着と理解をはぐくむ郷土教育自体は、ソ連時代にも存在した(ソ連時代には小冊子程度の教材が使われていた)。地理的に国の中心地(ヨーロッパ・ロシア)から遠く離れているこれらの地域は、ソ連邦崩壊後の価格の自由化による輸送費高騰のため、一層その距離感を増し、加えて、旧ソ連邦各地との連携も絶たれた。そのため、極東を例にとれば、近隣のアジア太平洋地域諸国との関係強化による、地域独自の発展の方向性が強まった(地域主義の台頭)のである。 従来の歴史教育(「ロシア・ソ連邦史」)では、ロシアあるいはソ連邦という「国家」の発達史を、主に「国家」に焦点を当てて「国家」のレベルで論じてきた。その際「地域」の事柄は、それとの関連でその周辺部の出来事でしかなかった。この「国家」と「地域」の関係、つまり「全体」と「個」の関係は、多民族国家内のロシア民族と非ロシア民族の関係についてもいえる。もっともこれは何も「ロシア・ソ連邦史」に限ったことではなく、程度の差はあれ大方の「各国史」に共通していえることでもある。そして国の全域にわたって教科書は一律で、教育パターンは均質であった。 世界の「冷戦」構造が終結し、大きな社会変動の過程で、共生・共存、多元主義の考え方が普及し、「地域」の捉え方にも変化が生じた。この「地域史」の出版は、こうした社会背景を反映したものといえよう。すなわち、伝統的な画一主義の教育から、学習者や地域住民のニーズ、時代の要請を考慮した、多様な教育内容、教育方法への転換である。学校教育への「地域史」教科書の導入自体画期的な出来事といえよう。(後略)訳者あとがき