目次
1 タイ国史の特色
タイ人はここに居た?/もうひとつの「タイ人」国家/コスモポリタン港市アユタヤ/植民地にならなかったタイ/絶対王制と立憲君主制/ほか
2 政治と外交
タイ政治の特色/地方政治/軍部と政治
3 タイと隣接諸国
タイとカンボジア/タイとミャンマー/タイとマレーシア/タイとラオス/タイと中国
4 タイの経済
タイの伝統的経済/工業化と地域社会の変動/タイの財閥/産業構造と所得格差/タイの海外出稼ぎ労働
5 国民国家と民族
国民国家タイとタイ系諸民族/タイ国外のタイ族/タイの華人社会/モン人/マレー人とインド人/「後住」少数民族としての山地民
6 タイ語の特色
タイの言語文化/タイ語の文字と文法/日本語とタイ語の比較
7 タイの宗教
上座仏教の実践/精霊の世界と社会変化/周縁者の宗教実践/仏教信仰と精霊信仰の新たな姿
8 タイの教育
近代以前のタイの教育/ローン・サクーンと寺院学校/王立学校と教科書「ベープリエン・レオ」/初等教育法と教育普及/ほか
9 タイの社会
農村社会の変容と仏教/中間層の意識をも問う路上の政治/タイの中間階層/タイ社会と女性/タイの伝統医療と古式マッサージ/ほか
10 タイの人物
ラーム・カムヘーン/チュラーロンコーン/スリヨータイ/ピブーン・ソンクラーム/ククリット・プラーモート/ほか
11 芸術と文化
タイの建築/伝統舞踊/タイの文学/90年代以降のタイ映画事情素描
コラム◎年中行事,フェスティバル/タイの大学/タイ社会の諸相
《執筆者一覧(編者以外)》
赤木攻,綾部裕子,綾部真雄,飯島明子,飯田淳子,池本幸生,伊藤友美,岩城雄次郎,王柳蘭,大木登志枝,大島新人,岡本和之,笠井直美,片岡樹,加藤眞理子,北原淳,黒田景子,坂本比奈子,柴田千浪,渋谷恵,清水郁郎,末廣昭,鈴木規之,高井康弘,高岡正信,高橋勝幸,高橋美和,竹田晋也,玉田芳史,豊田三佳,馬場雄司,速水洋子,平田利文,増田えりか,村上忠良,村嶋英治,村田翼夫,森幹男,矢野秀武,山田均,吉川利治
前書きなど
グローバル化が加速度的に進んでいる現在、日本人は、世界の諸国とどう対応していくかという判断に迫られています。しかし日本人の多くは、未だに欧米文化のほうにあまりに気をとられているのではないでしょうか。 日本に最も近い地域である東南アジアに関しても、その国名さえまともに言えない学生層が増えています。一六〜二〇世紀の間、東南アジア地域を襲った植民地主義の荒波の中で、タイ国だけは独立を全うして今日に至っています。第二次世界大戦勃発当時、アジアで日本、タイ、アフガニスタンおよびトルコのみが完全な独立国だったと聞いて驚く知識人も少なくありません。「文明の衝突」が語られる現在、日本人はまず自国のまわりにはどのような歴史と文化をもつ国があるのかを理解していく必要があります。世界の国々の最新の実情を平易に紹介する明石書店のシリーズの企画に賛同し、『タイを知るための60章』を編集してみました。 本書の特色は、タイ国の歴史、民族、社会、経済、宗教、教育その他を紹介するのに、かなり細かい項目を立て、そのそれぞれについての専門家に執筆を依頼したことだと考えています。もちろん、これだけの歴史と大きさをもつ国のすべての側面を網羅することは本シリーズの性格上できませんが、類書にはない新しい情報が多数盛り込まれていると確信しております。はじめに 編者