目次
序論 文学と歴史学の対立を超えて
アリストテレス『詩学』
文学にとっての歴史学
歴史学にとっての文学
本書の構成
第一部 文学における歴史の表象
第1章 歴史としての現在──リアリズム文学の射程
リアリズム文学とは何か
革命後の世界を読み解く
現在に続く歴史
習俗を描く歴史家
習俗の表象から「生理学」へ
危険な集団の文学的登場
蛮族から民衆ヘ
第2章 文学はいかにして歴史の神話を解体するか
年代記から歴史学へ
英雄の不在
ナポレオン三世の表象
差異と反復
近い過去の歴史化
歴史を読み解く
第3章 文学、法、歴史──ユゴー『死刑囚最後の日』
Ⅰ ユゴーの位置と死刑にたいする立場表明
国民的作家ユゴー
作品の成り立ち
ユゴーの立場
Ⅱ 作品の歴史的位相
死刑制度をめぐる論争
死刑制度の変遷
フランス革命とギロチンの誕生
Ⅲ 作品の主題と構造
自己を語る犯罪者
死刑囚であるということ
徒刑という制度
死刑囚の苦悶と恐怖
死刑台への歩み
祝祭と群衆
Ⅳ 小説技法の刷新
日記体小説の嘴矢
断片性の美学
隠語の機能
Ⅴ ユゴー以後の文学と監獄
第4章 フロベールと歴史のエクリチュール
フロベールの歴史への関心
歴史の認識論から歴史小説へ
同時代の歴史小説をどう読んだか
歴史家をどう読んだか
『サラムボー』──叙事詩と歴史
文明と野蛮
歴史学の流れに抗して
『感情教育』から『ブヴァールとペキュシェ』へ
第5章 第二次世界大戦と現代文学
現代小説と歴史
文学から歴史学への越境──リテル、エネル
現代文学と第二次世界大戦への関心
ナチスを語る
第二部 歴史学と文学へのいざない
第6章 十九世紀における歴史叙述の思想と詩学
歴史認識論の現在地
ロマン主義歴史学の誕生
「起源」の探求に魅せられた時代
フランス革命を問いかける
歴史叙述の詩学
ジュール・ミシュレの位置
実証主義歴史学に向けて
二十世紀──実証主義への疑義
第7章 フランス史における英雄像の創出
アラン・コルバンの一冊の書物
パンテオンというモニュメント
十九世紀と偉人の創出
教育制度と歴史学
記念碑の時代
偉人たちの盛衰
二十世紀の状況──変化と恒常性
偉人の政治的効用
坂本龍馬と織田信長
日本における偉人の伝統
第8章 アラン・コルバンと歴史学の転換
歴史学界におけるコルバンの位置
感性の歴史の系譜
コルバンの仕事──五つの領域
例外的な試み
集大成と発掘
コルバンの欠落?
コルバンと十九世紀文学
第9章 現代の歴史家と文学の誘惑
歴史学からの反応
文学と歴史学の関係──その過去と現状
歴史学の底流
アラン・コルバンの位置
イヴァン・ジャブロンカと「方法としての私」
歴史書から小説ヘ──アントワーヌ・ド・ベックの試み
不在者の声
初出一覧
あとがき
注
人名索引