sugarさんの書評 2020/10/30
武器としての図で考える習慣: 「抽象化思考」のレッスン
平井 孝志(著)☆3
物事を考えるとき、ある程度フレームに当てはめることにより、その法則性を自ら導き出し、更に新しいフレームを加えることにより思考を広げる。
普段、頭の中で行っているものを本書では前半を具体事例を示しながら、「田の字」、「矢バネ」で思考する理由を示している。
後半はその使い方をレクチャーする。
基本的なことではあるが、私はこのような図を示す、言葉に書き出すことは非常に重要であると考える。
これは普段より、ケンカをした際や理不尽な出来事があった際など、まずは文章化し、その流れを客観視することにより、物事が見極められることが多いと感じている部分がある。
更に書くことにより、思考は整理され、さらにはそれは映像化、抽象化による深さが加えられるためだと考える。
本書は非常にその点をわかりやすく書いており、すぐに読破できる。
また個人的にはコラムが面白く、意外性があることが記載されていた。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析が現在も有効か?について言及する部分である。
つまり50年以上前に提唱されたフレームワークは時代遅れの考え方なのか?正直、しっかり考えたことがなかった。
フレームワークは思考の基準であり、まさに枠であり、道具であり、道具に正誤があるとは考えていなかった。まさに思考の枠外であった。
著者はその点をわかりやすく説明する。
PPMは縦軸に市場成長率(相手の魅力度)、横軸に相対マーケットシェア(自分の強み)を記載しており、負け犬は撤退、問題児を花形に移らせて事業を拡大していくのかを抽象化したフレームワークである。
しかし、この縦軸の市場成長率は高度成長期とは程遠く多くの先進国では市場は成熟しており、現在ではそもそも存在しておらず、市場の魅力は成長率だけでは語れない部分があると指摘する。
更にマーケットシェアだけでは自分の強みを語れないと指摘する。
また最も大きな問題点として、市場やシェアなどの「外」に目を向け、「中」、つまり自社の持つ資源・能力は明確に扱っていないと指摘している。
つまり、今どんな能力があるので、どうシナジーを活かしながら、何をすべきか?は何も示せないとしています。
ひとつのフレームワーク自体にすべてを求めるのは酷ではあるが、そのような視点はなくまさに図で考え、思考を広げる習慣がついている著者の実力を感じることが出来た。
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