目次
北の墓―歴史と人物を訪ねて 上 もくじ
この本を手にした方へ ~ はじめに 2
第一章 黎明期の雄叫び
蝦夷島の島主になった武将―武田(蛎崎)信広 12
城の形が箱館の地名に―河野加賀守政通 15
大沼に身を投げた武将―相原周防守季胤 18
民族の誇りかけて戦う―シャクシャイン 21
藩主に首討たれた僧―柏巌(門昌) 24
柏巌を処断した若藩主―松前矩広 24
鎖国の世にロシアを見た男―小市 31
幽霊になった〝夜泣き梅〟―河西梅 34
悲惨な死を「松前詰合一条」に残す―齋藤勝利 37
五千万歩を歩き日本地図作る―伊能忠敬 40
「夷酋列像」を描く―蛎崎波響 43
北海の海を駆けめぐる―高田屋嘉兵衛 48
「大日本恵登呂府」の標柱を立てる―近藤重蔵 51
世界地図にその名を残す―間宮林蔵 54
わが国で一番早く種痘を施す―中川五郎治 57
腹を切って果てた奉行―堀利煕 60
老齢の医師、情熱の治療―野村周甫 63
第二章 維新の嵐
兵庫開港で、天皇の怒り買う―松前崇広 76
開拓途上、五稜郭で不慮の死―荒井金助 79
白虎隊の生き残り―飯沼貞吉(貞雄) 82
「もう逃げられぬ」と腹を切る―草刈運太郎 85
悲憤の死、自決にすり替え―松前徳広 88
靖国神社に祭られた初の女性―川内美岐 91
新館を守り奮戦死した僧―三上超順 94
いまだ見つからない遺体―土方歳三 97
父子、義をつらぬき戦死―中島三郎助、恒太郎、英次郎 100
自決を図ったが死ねず―榎本釜次郎(武揚) 103
難所を開削し、山道を造る―伊達林右衛門(三代目) 108
札幌を建設し、悲憤の死―島義勇 111
武四郎を助けたアイヌ総首長―クーチンコロ 114
温泉開発に尽くした修験者―美泉定山 117
亀田川を掘割で導く―堀川乗経 120
激流に消えた渡し守―志村鉄一 123
独力で洋式帆船を建造―続豊治 126
五稜郭を建設した建築家―武田斐三郎 129
吹雪に巻かれ死んだ役人―清水三四郎 132
紙幣を偽造し収監、冤罪か?―熊坂長庵 135
北海道と命名した探検家―松浦武四郎 138
生まれ変わりの伝承を生む―川又友吉 141
会津戦争を戦った家老の謎―梶原平馬 144
小説「石狩川」のモデルに―吾妻謙 147
釧路の発展に力を尽くす―佐野孫右衛門(四代目) 150
会津藩士が屯田中隊長に―三沢毅 153
第三章 揺籃の明治期
サッポロビール作った〝夢の侍〟―村橋久成 158
典獄の姓が町名に―月形潔 161
「神の国」を作ろうと奔走―武市安哉 164
対立し、白石と手稲に別れ入植―三木勉・佐藤孝郷 167
新政府と対立、新聞界へ―栗本鋤雲 172
札幌村を開墾、開拓使に就かず―大友亀太郎 175
病妻の治癒に温泉を探す―滝本金蔵・佐多 178
役人から札幌神社宮司に―白野夏雲 181
榎本を助命した武人の情―黒田清隆 184
ゲリラ隊を組織し、榎本軍と戦う―小林重吉 187
義経像を守り抜いたアイヌ古老―平村ペンリウク 190
「屯田兵育ての親」と慕われ―永山武四郎 193
自ら開拓の先頭に立つ―伊達保子 196
伊達の町を作った領主―伊達邦成 199
ひたすら篠路開拓に尽くす―早山清太郎 202
〝根室王〟と呼ばれた新興商人―柳田藤吉 205
身を捨てて暴走列車を停める―長野政雄 208
信仰を基盤に開墾に励む―沢茂吉 211
開拓に入った龍馬の甥―坂本直寛と一族 214
監獄にベースボールを導入―大井上輝前 217
道内を放浪し、浮名流す―石川木 220
第四章 青雲の大正期
七十歳過ぎて斗満の開拓地に―関寛斎 228
北海道の写真技術の開拓者―田本研造 231
わが国初の女医、開墾地へ―荻野吟子 234
神職から司祭に転職した異彩―沢辺琢磨 237
旧幕兵の遺体を片づけた侠客―柳川熊吉 240
追放され、八雲を開拓―吉田知行 243
自由民権運動の志士―本多新 246
木の歌に登場する名物乞食―万平 249
「御用火事」を決行した開拓判官―岩村通俊 252
新選組の生き残り、小樽に果つ―永倉新八 255
「われらが愛する北海道」を作詞―石森和男 260
庶民目線で開拓を進めた大判官―松本十郎 263
偽名を使い、逃げ延びた死刑囚―井上伝蔵 266
寒冷地稲作に成功―中山久蔵 269
身を捨てて郵便物を守る―吉良平治郎 272
開拓に意欲傾けた〝岩村の懐刀〟―高畑利宜 275
近代科学技術の先駆者―福士成豊 278
『アイヌ神謡集』をまとめる―知里幸恵 281
勅語を運ぶ途中、吹雪で死ぬ―結城三郎 286
二宮尊徳の孫、開拓に尽くす―二宮尊親 289
信者とともに札幌への新道開削―大谷光瑩(現如) 292
煩悩の間に揺れ、愛人と情死―有島武郎 295
晩成社を率いて帯広に入植―依田勉三 298
丸井を背負った番頭―今井藤七 301
【こんな墓碑も】
アイヌ民族最後の抵抗闘争―寛政の蜂起 和人殉難墓碑 29
二七〇年前の大津波―五つの寛保津波の碑 46
結ばれぬ若い男女の恋―悲恋塚 66
江差追分の始祖―佐之市の碑 68
三平汁の元祖―斎藤三平の墓 70
浪士らの遺徳を讃える―赤穂義士四十七士の墓 72
賊軍兵士の無念漂う―碧血碑 106
官軍ゆえ護国の神に―招魂碑 106
女たちの「慟哭の碑」―有無両縁塔(遊女の墓) 223
カワラ職人のこだわり―土管の墓 225
世界熊害史最大の惨事、十人を殺傷―熊害慰霊碑 258
赤い墓に眠る「天下の号外屋」―信濃助治 304
受刑者の哀しみの碑―中央道路開削犠牲者慰霊之碑 307
爆発、泥流が人馬を呑む―十勝岳爆発遭難記念碑 311
墓のある風景 ~ あとがきにかえて 314
取材協力者 318
参考文献 320
所在地別索引 324
前書きなど
この本を手にした方へ~はじめに
『北の墓―歴史と人物を訪ねて(上)』をお届けします。北海道に関わる人物一〇〇人(基)余りを取り上げました。北海道の墓碑をまとめた本は、これまでも何冊か出ていますが、掲載人物の歩み、墓及び墓碑までの道のり、命日、戒名(法名)、諡号まで掲載した本はこれが初めてだと思います。
内容は、北海道の黎明期から維新期、明治、大正までの四部構成で、亡くなった年月により分類しています。
黎明期では武田信広、アイヌ民族のシャクシャイン、豪商の高田屋嘉兵衛、探検家の間宮林蔵など、維新期では悲運の死を遂げた松前藩主の松前徳広や三上超順ら、そして箱館戦争を戦った榎本武揚、土方歳三、中島三郎助父子ら、さらには開拓判官の島義勇や「北海道」の名づけ親の松浦武四郎らです。
明治期では伊達を開いた伊達邦成、樺戸集治監の初代典獄月形潔ら、大正期では秩父事件で死刑判決を受けながら逃げ延びた井上伝蔵、郵逓袋を運ぶ途中、吹雪に遇い死んだアイヌ民族の吉良平治郎、陸別に開拓に入った関寛斎らが含まれています。
北海道はよく歴史が浅いといわれますが、この本を読んでいくと、北海道ならではの独特な歴史が見えてくるように思えるのです。
文中は敬称を略し、年代は最初に元号を、その後にカッコ書きで西暦を記しました。年代は明治五年(一八七二)一二月二日まで、当時使っていた大陰暦を使い、改暦による明治六年(一八七三)一月一日からは太陽暦としました。年齢は当時使われていた数え年としました。
この本は私が中心になり、道新文化センター「一道塾」の塾生が、取材調査、執筆に当たりました。
二〇一四年春 合田一道