紹介
1968年2月12日、ベトナム、フォンニ・フォンニャット村。
ベトナム戦争の最中でおきた虐殺事件。その日いったい何が起きたのか。
韓国社会を揺るがせた戦争加害の証言。
ハンギョレ新聞の記者である著者が、インタビューをかさね丹念に追った戦争の記憶と東アジアの激動の歴史! 韓国から見た1968年論ともいえる本書は、市民運動の高まりにも言及しつつ戦争の傷からの和解を模索する。
本書は、ベトナム戦争に派兵された韓国軍による民間人虐殺事件に焦点を当て、ベトナム派兵を決定した朴正煕政権、米韓関係を中心とした韓国を取り巻く国際関係、さらに日本のベ平連などのベトナム反戦運動など、事件の実相とその背景について多角的分析を試みたものである。筆者は何度も現地に足を運び被害者やその遺族からの証言に耳を傾けるとともに、ベトナム戦争に従軍した韓国軍人への調査も行い、戦争における被害-加害の両面を丹念に追いかける。さらに、民間人虐殺事件をめぐる謝罪や慰霊の問題にも言及することにより、戦争が残した爪痕の深さを伝え、戦争責任の問題をめぐる今日的な問題を提起している。
目次
目次:
日本語版への序文--あの日のベトナム戦争史
重要登場人物
フォンニ・フォンニャット村地図
プロローグ 銃声、ある謎 1968年2月12日
第1章 二つの戦線
第1節 卑劣な街
ロアン、因果応報の時間
第2節 青瓦台襲撃、トイボ襲撃---北朝鮮がベトナムを助ける
第3節 キム・シンジョと大韓民国----兵営国家の誕生
第4節 ブンタウから平壌へ--アン・ヨンスと兄アン・ハクス
ベトナム戦初の捕虜誕生
第5節 ガジュマルの木は見た---フォンニ・フォンニャット、歴史
第2章 ガジュマルの木の虐殺
第1節 少年と少女の戦争--グエン・ティ・タンとチャン・ジエブ
グエン・ティ・タン、韓国に来る
ふざけ相手だった韓国軍、銃を撃った韓国軍---グエン・ドゥク・サン氏インタビュー
「なぜ撃った? なぜ切り裂いた?」---チャン・ジエブの話
第2節 あそこに人がいるよ---南ベトナム軍、グエン・サの悲哀
「お菓子をもらった。怖かった」---グエン・ティ・ルオンとグエン・ティ・ギア
第3節 子守唄のなかの虐殺--母親の懐で生き延びたレ・ディン・マン
レ・ディ・マンの兄ムク
第4節 水牛が変えた生死---チャン・ティ・ドゥオクとファン・ルオン家族の物語
チャン・ティ・ドゥオクとファン・ルオンの黄昏
第3章 復讐の夢
第1節 最も残酷な攻撃---FとGと名付けられたグエン・ティ・タン
第2節 仇を討とう、山へ入ろう--グエン・スとチャン・ヴァン・タの襲撃
「アメリカ軍の陰謀だと思った。」----村の長老グエン・ス
地雷を踏んであえいでいた同志---チャン・ヴァン・タの山での生活
第3節 俺はスナイパーだ---ベトコンになった脱走兵チャン・ヴァン・ナム
言葉で闘ったチャン・トゥ
第4節 写真、撮る者と撮られる者--米軍上兵ボーンと少女チャン・ティ・ドゥオク
第5節 精霊のセ---フォンルック村の不吉な家の秘密
フォンニ・フォンニャット・フォンルック事件
第6節 ダナン博物館の一枚の写真---可愛らしいちびっ子たちの消息を聞いてほしい
第4章 海兵の日々
第1節 徒党争いのはるか遠い追憶---チェ・チュオン中尉、ホイアンに行く
「ピョンシンセッキども」--1968年の雑誌『アリラン』に掲載されたある負傷軍人の絶叫
第2節 真っ白なジャングル---殺すか殺されるか
第3節 アラン・ドロンのサインのように---戦闘より重要な作戦
第4節 ヤンキー、銭の戦争---一二時間以内に軍票を回収せよ
第5節 中央情報部での一日---なぜ、誰が撃ったのか?
第5章 偽装と特命
第1節 戦争犯罪は事実なのか?---ウエストもーランドからチェ・ミンシンへ
第2節 ベトコンの邪悪な陰謀--チェ・ミンシンからウェストモーランドへ
第3節 私たちは虫ケラなのか?---嘆願書、チュー、ミライ
第4節 絶対、絶対にマスコミには…---サイミントン聴聞会という暗雲
「その部隊の一員だったというのは汚名だよ」---第一小隊長チョ・ヨンオン氏インタビュー
「中隊長が手で首をはねる仕草をしたんです」---第二「小隊員のリュ・ジンソン氏インタビュー
第6章 チェ・ゲバラのように
第1節 撃つな、疲れた--パク・チョンヒを止めに来たヴァンス
第2節 虫の側で闘う---ベ平連、小田実の闘争
戦後日本の平和運動のリーダー-----小田実のと生涯
第3節 鳥籠を飛び出してスウェーデンへ---キム・ジンスの脱走亡命
第4節 旅券偽造007作戦----ジャテックと高橋武智
八〇歳代でも市民運動家として生きる
第5節 ゲバラからホー・チ・ミンまで---巨大なかがり火、六八年運動
エピローグ---慰霊碑、七四の名前の前で
補論 カンのつま先---二〇年ぶりに復元された一枚の写真の話
解説 平井一臣
年表