sugarさんの書評 2018/08/03
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 佐藤 航陽(著)
本書は著者がこれまでビジネスにおいて経験し、確信に変えてきたお金に関する概念を示したものであり、著者が考えるお金の本質を記したものである。
前半は法定通貨と仮想通貨の違い、仮想通貨や評価経済を成り立たせる経済システムの仕組み、それらに影響するテクノロジーなどを解説する。
後半は、そうした社会の動きから生まれつつある、資本主義に代わる価値主義と、その中で人がどういう生き方を選ぶべきかという筆者の考えを述べている。
つまり、お金を中心とした考え方の枠組みを示したものであり、非常に興味深い内容であった。
以下、気になる点についてまとめる。
■経済システムの特徴: 「経済システム」は、大前提として自己発展的に拡大していくような仕組みである必要がある。誰か特定の人が必死に動き回っていないと崩壊するような仕組みでは長くは続かない。この持続的かつ自動的に発展していくような「経済システム」には5つの要素がある。
① インセンティブ、 ② リアルタイム、 ③ 不確実性、 ④ ヒエラルキー、 ⑤ コミュニケーション
■これから10年の大きな流れ: 世の中に膨大なデータが溢れたことで進んでいく「分散化」とネットワーク型社会に移行することで起きる「自動化」の2つ。そして、この2つが混ざった時に起こる「自律分散」というコンセプト。すなわち、インターネットやビットコインのように中央集権的な管理者がいなくても上手く回る仕組み。シェアリングエコノミー、ブロックチェーン、深層学習、IoTなどの技術トレンドもこの仕組みの実現に必要な要素。
■価値主義: お金が調達しやすい環境になったこと(ベージックインカムの導入などもそうした潮流の1つ)で、信頼や時間や個性のようなお金では買えないものの価値が相対的に高まっている。「価値」を最大化しておくことが重要で、お金は価値を資本主義経済の中で使える形に変換した選択肢の1つに過ぎなくなっている。これらを踏まえ、価値主義とは次の2つの変化が混ざった現象といえる。
①お金や経済の民主化: これまで300年近く国家の専売特許とされてきた通貨の発行や経済圏の形成が、新たなテクノロジーの誕生によって誰でも簡単に低コストで実現できるようになりつつあること。
②資本にならない価値で回る経済の実現:これまで具体的な価値として計測されてこなかった内面的な価値や社会的な価値をも可視化して、それらも経済として成り立たせること。
さらには経済と政治、宗教の境界線が希薄になる。
AIを神として崇めて世の中をより良くすることを教義とする新興宗教は元々の経済と同じで、企業が理念を掲げ社会的な価値をより追及していく流れにあり、一方で宗教は内面的な価値を取り込み経済を形成する。
今後の生き方としては「枠組みの中で競争して生きる」のではなく、『枠組み自体を作る競争をしなければ生きていけない』
この書評がいいと思ったら、押そう! »
いいね!