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                    ディーン・マーティンもリッキー・ネルスンも、いまのうちだから スミス・コロナのタイプライター。ばったり。うっかり。がっくり。どっかり 一月一日の午後、彼女はヴェランダの洗濯物を取り込んだ 湖のほとりのプールに陽が沈む。そして夏は終わる あのペンネームはどこから来たのか 大学の四年間は一通の成績証明書となった 真珠の首飾りを彼女がナイト・テーブルに置いた 営業の人になりきったら、それ以外の人にはなれないでしょう? 男の社員ばかりで鬼怒川温泉に行き、それからどうするというのか あなたは、このコーヒーの苦さを忘れないで だからそこでは誰もが霧子だった 彼は鎖骨の出来ばえを語る。隣りの店ではボブ・ディランが語る バラッドは彼女の全身に吸い込まれていった ひょっとして僕は、甘く見られているだろうか 僕はいま拍手をしています。聞こえてますか みなさんのお店ですから、気をつけてください 今日という日がすべてひっくるめられた一曲とは クリーム・ソーダは美しい緑色のフィクションだ 女が鳴らす口笛は恋の終わりの東京ブルース ビリヤードの匂いと江利チエミ、そしてパティ・ペイジ 「の」と「Over」の迷路に少年はさまよい込んだ 次の曲は何だろうか。ラテン・スタンダード集は誘惑する 雨の降りかたには、日本語だと二種類しかないんだ
ビートルズ来日記者会見の日、僕は神保町で原稿を書いていた 水割りと柿の種、十周年 読まれてこそ詩になるのよ 赤提灯の先には、ビル・エヴァンス スリー・レイニー・ナイツ・イン・トーキョー なにか叫んでいる人がいるね。名調子だね コーヒーが三杯、赤電話が二回、ブレンダ・リーが七曲 今日のコーヒーは、ひときわ苦いな メカニカル鉛筆は、美人と一緒に坂を上がり、そして降りる 楽しく美しい本を、まだ僕は一冊も作ってはいないではないか 幼い僕は走った。琴の音が追いかけて来た ではきみも、薄情けなのか フィルモアの奇蹟はさておき、エアプレーンもトラフィックの一手段だ 雪は降る。「どうかよろしく」「こちらこそ」 こうでしかあり得ないからこうなった歌 「すまない」と僕も言ってみたくなった 私の心のなかは、まっ暗闇よ。たぶん、おそらく、きっとね ヘルスセンターで、ジャニスは祈る トラヴェリン・バンド。橋を渡る美人。黒いニットのタイ 部屋を暗くし、目を閉じ、自分は動詞になる その歌をもっとも淡泊に歌った彼女が傘を僕に差し出した