紹介
中世は連歌の様式の生命がまさに息づいていた時代であった。
中世に隆盛した連歌文芸を対象に、〈座〉の文芸である連歌様式の生成と展開、連歌師の連歌句集や連歌論書等の諸作品、ならびに戦国期の連歌師の生活と深く結びついた紀行について考察。刻々と変容する中世という歴史的・社会的・文化的な環境の〈場〉において、連歌様式が外的環境とどのように切り結びつつ、どのような文芸として存在したのか、多面的な視点で立体的に捉える。
【中世の始発期に、なぜ連歌百韻の様式が形成されたのか。連歌文芸は、都鄙貴庶を問わず、なぜ中世において隆盛を見たのか。本書では、黎明期における連歌の座と様式の生成過程や、様式の意味や機能をあらためて問い直すところから始めている。連歌の作品研究を行ううえでも、踏まえておくべき本質的な課題と考えるゆえである。ついで、連歌確立期の能阿・専順・心敬ら七賢の連歌師の諸作品の考察、ならびに連歌最盛期を迎え、地方での連歌指導のため都鄙を往還する戦国期を代表する連歌師、宗祇・宗長・紹巴の紀行について考察し、多様な視点から連歌文芸の諸問題の探究を試みている。】……「はじめに」より
目次
はじめに
第Ⅰ部 連歌の座と様式
第一章 短連歌考─場の構造と形式機能について
はじめに
一 短連歌の資料
二 短連歌と〈場〉の構造
三 〈場〉と形式機能
第二章 長連歌の形成
はじめに
一 〈鎖連歌〉の発生─前期院政期
二 〈長連歌〉の形成─後期院政期
三 〈百句〉の出現─正治二年とその前後
四 後鳥羽院と城南寺─競詠連歌の始まりと終わり
第三章 連歌の時空と構造─〈発句〉様式の解析を基底として
はじめに
一 〈発句〉と季語・切字
二 〈発句〉と連歌百韻の時空
三 連歌の〈座〉と中世
四 連歌文芸と〈詩〉の課題
第四章 連歌と音曲─南北朝期の連歌論をめぐって
一 泉水・楽・連歌
二 吟と「かかり」
三 音声と音曲
四 「池の園ものかたり」
第五章 連歌と法会─結界・声明・回向
一 様式の新生
二 座と作法
三 声明の波動
四 回向と行
第六章 連歌と神祇
はじめに
一 筑波の道と〈古代〉
二 連歌と〈神〉
三 百韻連歌の〈座〉
四 古代の甦りと〈共身体〉
第Ⅱ部 作品考
第一章 能阿『集百句之連歌』とその背景
はじめに
一 『集百句之連歌』の制作
二 後土御門天皇と連歌
三 能阿とその環境
四 名所の句と四季の景
第二章 心敬連歌論と〈詩〉の生成
一 連歌と〈詩〉
二 〈詩〉と形而上
三 言葉は心の使
四 空と水・青
五 表象と相関
第三章 専順『前句付並発句』─翻刻と考証
はじめに
一 翻刻『前句付並発句』
二 考証(1)〜(4)
第四章 『宗長秘歌抄』諸本考
はじめに
一 諸本と奥書
二 成立と伝来
三 本文の系統と善本
四 今後の課題
第五章 『宗長秘歌抄』の注釈態度─連歌師の古典和歌享受の方法
はじめに
一 注釈内容
二 他注との関係
三 配列形態
第Ⅲ部 連歌師と道の記
第一章 宗祇と旅─越後への道
一 宗祇と越後
二 越後と都を結ぶ道
三 越路の空
第二章 宗祇の影─宗長の二つの〈終焉記〉をめぐって
一 宗祇と宗長
二 『宗祇終焉記』と宗祇像
三 宗長晩年の記
四 連歌師の風雅と旅
第三章 『宗長日記』の構成─悲話と笑話の断章
はじめに
一 作品の構成
二 記事の集積
三 悲話の断章
四 笑話の断章
おわりに
第四章 『宗長日記』と茶の湯─下京・薪・宇治白川
一 下京茶の湯
二 薪酬恩庵と大徳寺
三 宇治白川
第五章 宗長と数寄─〈竹〉のある景をめぐって
はじめに
一 宗長の草庵
二 草庵生活と〈竹〉
三 草庵文学と〈竹〉
四 中世と〈竹〉の草庵
五 〈竹〉と尺八
おわりに
第六章 宗長の旅─境界と縁
はじめに
一 『宗長手記』と駿河・今川氏
二 戦乱の旅・境界の旅
三 境界と連歌
四 境界と通行・境界と縁
五 文脈の境界─分断と連続─
第七章 紹巴の旅─『紹巴富士見道記』をめぐって
はじめに
一 紹巴と旅
二 『道記』の背景
三 〈東下り〉と『伊勢物語』
四 追憶の旅
五 旅路の交流
六 都の威光
七 喪失と出立
おわりに
初出一覧
あとがき
連歌索引
和歌索引
人名索引
書名索引