紹介
これだけ知れば楽しく読める10の和歌のルールをやさしく説明 !
高校の教科書に載っている作品を中心に、和歌の魅力を味わうのに十分な10のルールを選びました。
初めて和歌を読む人々を思い浮かべて書かれた、わかりやすくて本格的な和歌案内書です。
ルールさえ知っていれば、今よりずっと楽しめるようになるのです。ルールといったってずいぶんたくさんあるのだろうなあ、と不安にならなくても大丈夫です。どんな競技でも、基本的なルールはそう多くはないでしょう。
そのルールのうち、とくに基本的なものを解説するのが本書の狙いです。
これだけ知っていれば、和歌の一番大事な魅力を味わうのに十分、というルールだけを選び出しました。
もしかしたら、十個のルールでは少なく思えるでしょうか。でもこれだけわかっていれば、かなりのものです。格段に和歌が面白く読めるようになること、請け合いです。
執筆は、上野誠/大浦誠士/小林一彦/小山順子/鈴木宏子/田中康二/谷知子/中嶋真也/錦 仁/廣木一人/渡部泰明。
目次
●はじめに
ルールさえ知っていれば、和歌は、今よりずっと楽しめる
▼渡部泰明
和歌はシンプル
和歌は人の心を表す
和歌にはルールがある
どうしてルールがあるのか
基本ルールは修辞
和歌はプレゼント
第1章●枕詞[まくらことば]
―それは古風な約束事の言葉、訳せないけれど、意味がないわけではない。
▼中嶋真也
枕詞の力
「しろたへの」と白
「ちはやぶる」と神
「ひさかたの」と天
枕詞と古代
第2章●序詞[じょことば]
―一見関係なさそうな事柄なのに、人の心に形を与え、わかった気持ちにさせてくれる。
▼大浦誠士
恋と序詞
〝乗り換え〟の形式
心の〝かたち〟
サブリミナル効果
心の理解に正解なし
心が伝わった!?
第3章●見立て[みたて]
―風景をありえないものに一変させる、言葉の力。
▼鈴木宏子
見立ての定義
本当は似ていない?
見立ての歴史
自然と自然の見立て
自然と人事の見立て
紀貫之の手腕
第4章●掛詞[かけことば]
―自然と人間を二重化した、意外性の世界。
▼小林一彦
たくさんの思いを伝える工夫
掛詞の二つのタイプ
イメージを豊かにする
自然と人間を結ぶ
風景で心を伝える〝魔法のことば〟
不意打ちをしかける
実は同音異義語ではなかった―掛詞の正体
掛詞を見つけるヒント
第5章●縁語[えんご]
―作者がひそかに仕掛けた暗号。〝隠れミッキー〟を探せ!
▼田中康二
縁語とは
縁語と連想の違い
たぐり寄せられる言葉
縁語は歌の趣旨には関わらない
縁語は「隠れミッキー」だ
四季を詠む歌
紡ぎ出される言葉
縁語の定義
反転する言葉
縁語は一対でよい
歌人は縁語の技巧を磨いた
第6章●本歌取り[ほんかどり]
―古き良き和歌を味わいぬき、それを自分の歌の中で装いも新たに息づかせる。
▼錦 仁
俊成の本歌取り
本歌取り
定家の本歌取り理論
定家の歌
和歌に師匠なし
本歌から新しい歌へ
第7章●物名[もののな]
―物の名前を隠して詠む、あっと驚く言葉遊び。
▼小山順子
言葉遊びの和歌
隠された四つの言葉
最高難度、九文字の言葉を隠す!
題と歌の内容との距離が面白い
第8章●折句・沓冠[おりく・くつかむり]
―仮名文字を大切にしていた時代に、和歌を使ったパズルがあった。
▼谷 知子
折句―「かきつばた」
折句は刺繍
和歌の心を知る
沓冠は折句の応用篇
兼好の沓冠
第9章●長歌[ちょうか]
―長歌は、思い出を長くとどめるための記念写真。
▼上野 誠
長歌とは何か?
赤人は何に、どのように感動したのか?
子等を思う歌
じつは序文があるのです
山上憶良の言いたかったこと
信仰中心主義か、人間中心主義か
ふたたび長歌とは何か?
第10章●題詠[だいえい]
―題詠は、変わらない真実を表そうとする試み。
▼廣木一人
作者は寒かったか
歌は嘘か
題詠につながる意識
どのような題が出されたか
組題というまとまり
「題しらず」とは
落題は落第
題詠が和歌の可能性を広げた
題と歌会
●和歌用語解説
●おわりに
どうすれば、和歌はおもしろく読めるのか、楽しく学べるのか
▼錦 仁
●執筆者一覧