紹介
〈少女小説〉と〈少年小説〉が、
戦前から戦後にかけてのまんがの成立を大きく規定し、
日本の「まんが・アニメ」文化の礎を築いてきたのではないか―。
ライトノベルを起点に〈少女小説〉〈少年小説〉に戻り、日本の物語文化を見直す。
特権化されてきた、まんが・アニメーション文化論を超え、現代日本の物語文化を見直すとき、そこにはどんな問題が立ち上がってくるのだろうか。
これまであまり行われてこなかった、まんが・アニメと小説とがどのようにつながるのかという問題を、〈物語文化〉という問題意識から考える文芸批評。
大塚英志〜東浩紀を経てゼロ年代批評に至る既存のサブカルチャー論に、文学研究の視点から全面的に反論。日本のキャラクター文化言説の再編成を行う、刺激的な書。
【......これからの私たちがまんがやアニメーション、ライトノベルについて語るときに求められるのは、それぞれのメディアを「特殊」な文化として囲いこみ、それぞれのメディアにおいて作り出されただけを限定的に論じるというあり方ではないはずである。むしろ、日本のまんが文化、アニメーション文化、そしてそこに加わったライトノベルという媒体、その他日本語によって作られている〈物語〉を伴ったさまざまな文化全体の中で、それぞれがどのように位置づけられるかということを考えていく視点が必要である。
このような視点のあり方を、筆者は〈現代日本の物語文化〉についての考察と称している。......】......本書第三章より
目次
はじめに
一般文芸のライトノベル化という現象を前にして
「まんが・アニメ」文化は、「おたく」文化として特権化されてきた
そもそも「おたく」文化とそれ以外とのあいだに、本当に距離はあったのか?
「まんが・アニメ」文化の礎を築いたのは、〈少女小説〉〈少年小説〉ではないか
ライトノベルを起点に日本の物語文化を見渡す
第1章◉ライトノベルとキャラクター
ライトノベルの現在
一般文芸のライトノベル化
「ライトノベル」は定義可能か
一般的すぎた東浩紀の「データベース理論」
〈文学史〉としての「リアリズム」
リアリズムという幻想
本書の目的―〈物語文化〉を見直す
「ライトノベル」とは
「ジャンル小説」としてのライトノベル
「ジャンル外」作品群としての少女向けレーベル
「ライトノベル」一九九〇年「誕生」説について
① ネット上に見られる情報共有のあり方
② 「ライトノベル」という用語の「誕生」
③ 普及しなかった「ライトノベル」
④ 「ひとくくり」にすることの是非
a 性別隔離文化
b ファンタジーブームとTRPG
c 少女小説の動向と前田珠子の越境
d 越境の不可能性
e カルト化するライトノベル読者とその克服のために
ふたたび、「ライトノベル」へ―〈物語文化〉への視覚
第2章◉「少女小説」「少年小説」「ジュブナイル」
青少年向け小説をめぐって―メディアを越境する引用
Ⅰ◉少女小説
「少女小説」とは
「少女小説」の誕生
少女小説の全盛期
尾崎翠の位置
従軍期の時代
「ジュニア小説」へ
『ジュニア文芸』と『小説ジュニア』
〈児童文学〉のイデオロギー
一九七〇年代から八〇年代へ
Ⅱ◉少年小説
「少年小説」
「少年」の登場
明治二十年代の少年雑誌
「出版帝国」博文館の参入
『少年文学』シリーズ
『少年世界』創刊
SFから冒険小説へ
押川春浪
大学館の作品群
羽化仙史とその周辺
講談と「実録物」
村上浪六と「書き講談」
『少年倶楽部』の小説作品
① 吉川英治
② 大佛次郎
③ 佐藤紅緑
児童向け書籍としての赤本
少年小説の全盛
① 冒険小説
② 探偵小説
③ SF
戦時下への接続
「まんが」と「絵物語」
戦後の少年小説
光文社の登場
少年小説ブーム、ふたたび
少年小説の衰退
Ⅲ◉ジュブナイル
「ヤングアダルト」の展開
「ジュブナイル」
ジュブナイル、その後
第3章◉〈キャラクター〉論
高垣眸の位置
一九七〇年代ライトノベル「起源」説の実態
サブカルチャーのカルチャー化
〈キャラクター〉再考
古典文学はキャラクター小説か?
『おおかみこどもの雨と雪』が示すもの
細田守の演出とキャラクター表現
小説とキャラクター
視覚情報との接続
少女小説・少年小説のキャラクター性
「僕/ボク」を自称する少年
キャラクター小説と一般文芸
ライトノベルの英訳におけるキャラクター性の消失
日本語の〈再様式化〉としての言文一致
まんが、アニメの位置
現代日本の物語文化
◉資料・参考文献一覧
おわりに
付録◉本書関連年表