紹介
古典日本語の時間表現には、どのような体系と意味の対立があるか。
その表現を容易に対照できるようにした新方式の書。
見開き2ページを4象限に分割し、ひと目で動詞の語形相互を対照できる、版面分割方式を採用。
▼本書では、文法的意味はまず第一に述語になる動詞の語形の変化によって表されるのだという、いわゆる形態論の立場にたって議論する。
▼言語の形態論的システムは、対立・中和・競合の三つの作用で成り立っている。こうした関係も本書ではわかりやすく説明する。
▼〈表出〉と〈記述〉という言語機能の面からもアプローチ。
▼【概説編】で大枠をつかみ、【用例編】で確認する。
【一般に言語においては、単語の文法的意味は、その単語の語彙的意味の、文のなかにおける存在の仕方であり、比喩的にいうならその外皮であるから、その中身である語彙的な意味がその文法的な意味に対して影響をあたえるのはむしろ当然のことなのである。ところが、江戸時代以来の国語学の伝統では、文法的意味は単語の語彙的意味からきりはなされ、助動詞の意味としてあつかわれるため、おなじ単語の文のなかでのあり方(語形)のあいだの文法的意味のちがいが正面から問題にされることはない。本書は、そうした語形のあいだの文法的意味のちがいをあきらかにしようとするものである。そこで、文法的意味の差異をとりだしやすくするため、動詞の語彙的意味を一定にし、動詞の語形の意味を容易にとりだせるように工夫した。】......「はじめに」より
目次
凡例
はじめに
【概説編】
第一部 現代日本語のテンス、アスペクト、パーフェクト
(一)テンス・アスペクト―具体的意味の動詞
(二)テンス・アスペクト―抽象的意味の動詞
(三)パーフェクトとその変種
(四)絶対的テンスと相対的テンス
(五)時間的限定性とアクチュアリティー
第二部 古典日本語のテンス、アスペクト、パーフェクト
(一)古典日本語の時間表現の体系
(二)古典日本語のテンス
1、古典日本語の未来と現在
2、古典日本語の過去
(三)古典日本語のアスペクト
(四) 古典日本語のパーフェクト
1、《パーフェクト》性
2、メノマエ性
第三部 非過去形式の意味
(一) 完成相ツ形、ヌ形の個別的意味
1、具体的事実の意味
2、抽象的・一般的な意味
1 例示的意味 2 潜在的意味
(二) 不完成相のはだかの形の個別的意味
1、具体的過程の意味とその変種
1 継続的意味 2 志向的意味 3 遂行的意味 4 直前的意味
2、一般的事実の意味
〈言語活動〉〈疑問〉〈理由〉〈説明〉〈来臨〉〈評価〉〈感嘆〉〈問い返し〉〈反語〉
3、抽象的・一般的な意味
1 くりかえしの意味 2 潜在的質的意味
(三) タリ・リ形の個別的意味
1、変化の結果の継続
2、パーフェクト
1 運動の成立と結果・痕跡の存在 2 経歴・記録 3 以前の実現
3、恒常的状態
第四部 過去形式の諸問題
(一) キ形とケリ形のちがい
(二) キ形およびその複合形式
第五部 過去形式の意味
(一)テキ・ニキ形の個別的意味
1、具体的事実の意味
(二)キ形の個別的意味
1、具体的過程の意味
2、一般的事実の意味
3、くりかえしの意味
4、潜在的質的意味
(三)タリキ・リキ形の個別的意味
1、変化の結果の継続
2、運動の成立と結果・痕跡の存在、経歴・記録
3、以前の実現
4、恒常的状態
第六部 ケリ形態の意味
1、思い至り
2、再認識
3、気づき
4、言及
【用例編】
第七部 非過去形式の個別的意味と動詞の種類
(一) ツ・ヌ形の個別的意味と動詞の種類(ⅰ)
(二) はだかの形の個別的意味と動詞の種類(ⅱ)
(三) タリ・リ形の個別的意味と動詞の種類(ⅲ)
(四) 非過去形式の意味のコメント(ⅳ)
第八部 過去形式の個別的意味と動詞の種類
(一) テキ・ニキ形の個別的意味と動詞の種類(ⅰ)
(二) キ形の個別的意味と動詞の種類(ⅱ)
(三) タリキ・リキ形の個別的意味と動詞の種類(ⅲ)
(四) 過去形式の意味のコメント(ⅳ)
第九部 ケリ形態の個別的意味と動詞の種類
(一) ニケリ・テケリ形の個別的意味と動詞の種類(ⅰ)
(二) ケリ形の個別的意味と動詞の種類(ⅱ)
(三) タリケリ・リケリ形の個別的意味と動詞の種類(ⅲ)
(四) ケリ形態の意味のコメント(ⅳ)
▼用例索引 ▼個別的意味索引
おわりに
参考文献