紹介
『夜の寝覚』の、寝覚上の心理描写を物語の構造の中にどう位置づけるか。
女主人公の心理のありように注目が集まるあまり手薄になってしまった、作品の主題をどう捉えるか、物語史上にどう位置づけるかといった本質的問題を解明する。末尾欠巻部分の資料を丹念に検討し、『夜の寝覚』の全体像を正確に捉える。加えて、散佚物語をも含めた中古・中世の王朝物語群から『狭衣物語』『小夜衣』『かばね尋ぬる宮』『松陰中納言物語』を取り上げる。
【本稿で取り上げた作品の考察に当たっては、『竹取物語』『源氏物語』といった先行物語だけではなく、中世王朝物語の作品群を視野に入れ、ストーリー・表現の類似といった面からも検討を加えてみた。中古〜中世の王朝物語は、源氏や竹取の影響を抜きにしては考えられないことは当然であるが、それ以外の多くの物語—今日に伝わらないものも含めて—の影響を受けつつ成立してきたこともまた、間違いあるまい。先行物語だけでなく、後代の作品から物語史をさかのぼって見ることを通しても、新しい見方が生まれてくるはずである。】—終章より
目次
序章
第一部『夜の寝覚』
—欠巻部分の復元と物語の構造をめぐっての考察—
第一章 『夜の寝覚』末尾欠巻部分の再検討
—新出資料の解釈をめぐって—
第二章『夜の寝覚』末尾欠巻部分の構造
—新旧資料の解釈の再検討—
第三章 『夜の寝覚』末尾欠巻部分の構造 補遺
第四章 『夜の寝覚』末尾欠巻部分の資料の解釈をめぐって
第五章『夜の寝覚』の帝と女君
—「長恨歌」周辺の資料との関連を中心に—
第六章 『夜の寝覚』末尾欠巻部分における立后・立坊をめぐって
第七章 寝覚の上の宿命
—『夜の寝覚』第三部の構造をめぐって—
第八章『夜寝覚抜書』の方法
—第二場面と『小夜衣』との関連を中心に—
第九章 改作本『夜寝覚物語』の方法
—女主人公の人物造型の改変をめぐって—
第二部 平安後期物語・中世王朝物語をめぐって
第十章 『狭衣物語』跋文の解釈についての試論
第十一章 「飛鳥井物語」の変貌
—『小夜衣』女性主人公像を中心として—
第十二章 「うづもれぬかばね」の物語
—『かばね尋ぬる宮』の復元試論—
第十三章 『松陰中納言物語』と聖徳太子伝
終章
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