紹介
人麻呂自身の〈ことば〉から
その〈こころ〉に、どこまで迫れるのか。
天武・持統朝を中心に活躍した歌人、「歌聖」柿本人麻呂。
本書はその人麻呂の相聞歌と挽歌の抒情、景と情との関連、そして、武田祐吉が描く人麻呂像の可能性を、人麻呂の作品における歌表現の検討から論じる。
【 柿本人麻呂は、万葉集を代表する歌人として広く世間に知られている。しかし、その来歴は、史実に一切記されることはなく、人はただ、歌によってのみ人麻呂を知り、人麻呂はただ、歌によって語るのである。
それゆえ、人麻呂の作品とどのように向き合うか、が問われる。本書は、人麻呂の用いた〈ことば〉をてがかりに、人麻呂の形づくった〈こころ〉を探究したものである。具体的には、相聞歌と挽歌の抒情、景と情との関連、そして、武田祐吉が描く人麻呂像の可能性を、人麻呂の作品における歌表現の検討から、論じたものである。……序より。】
目次
凡例
序 柿本人麻呂研究
はじめに
柿本人麻呂の研究史
本書の概略
おわりに
第一部■柿本人麻呂作歌の研究—作品論的考察—
第一章 石見相聞歌
はじめに
一 「偲ふらむ」と「嘆くらむ」—その心情の相違—
二 長歌の主題
三 反歌の構成とその意義
おわりに
第二章 泣血哀慟歌
はじめに
一 本文長歌の表現—「玉かぎる ほのかに」
二 或本長歌—「灰」の表現性
三 長歌の文脈—呼称と報●せの相違
四 第三反歌の意義—「外」を向く「枕」
おわりに
第三章 出雲娘子の火葬を詠む歌
はじめに
一 問題の所在
二 火葬のもたらす死の観念
三 出雲娘子の造形
四 河辺宮人の歌との比較
おわりに
第四章 明日香皇女挽歌
はじめに
一 思い人の形見
二 死者の形見
三 「偲ひ」の景
おわりに
第二部■柿本人麻呂歌集の研究—作品論的考察—
第一章 柿本人麻呂歌集の研究史
はじめに
一 近世
二 近代
三 現代
おわりに
第二章 巻十巻頭歌群
はじめに
一 表記「霏●」のもつ意義
二 「霞たなびく」という表現
三 一八一三番歌の相聞性
四 妻問いの場としての山
五 歌群の構成
おわりに
第三章 巻九舎人皇子歌群—一七〇四番歌・一七〇五番歌・一七〇六番歌—
はじめに
一 一七〇四番歌の解釈
二 一七〇五番歌の解釈
三 一七〇六番歌の解釈
四 三首の関連
おわりに
第四章 巻七の旋頭歌—一二九四番歌—
はじめに
一 「朝月日向山」の訓読
二 「月立てり」の解釈
三 「遠妻」と七夕歌
四 「見つつ偲はむ」の解釈
五 巻七旋頭歌の集団性と抒情性
おわりに
第三部■近代の柿本人麻呂研究者の一視座—武田祐吉の人麻呂研究—
第一章武田祐吉の文学研究
はじめに
一 大正期
二 昭和期—二十年まで
三 昭和期—二十年以降
四 武田祐吉著『柿本人麻呂』の意義
おわりに
第二章 巻向歌群論
はじめに
一 武田祐吉の巻向嬢子論
二 武田説の検証
三 新たな巻向歌群論
おわりに
第三章 柿本人麻呂の妻論
はじめに
一 武田祐吉の「柿本人麻呂の妻」論
二 泣血哀慟歌の妻
おわりに
第四章 人麻呂の季節歌論
はじめに
一 武田祐吉の捉えた季節感
二 武田後の人麻呂歌集の季節歌論
おわりに
初出一覧
あとがき
索引(歌・研究者名)