きゃべつさんの書評 2024/04/23
この社会の灯火
NPO法人ビッグイシューのインターンから始まり14年間生活困窮支援に関わっている著者が、現在の日本社会で見えなくされている人々の生活の実態を報告する
物価高のニュース、政府の電気代ガス代ガソリン代補助についてのニュースに関心が高まることからも明らかなように、多くの人はお金がないのはたいへんだ、と実感している
にもかかわらず、生活保護を受給するとなると、なぜか敵意をむき出しにする人、侮蔑の
まなざしを向ける人もいるのだという
そもそも、国が、憲法でうたわれている健康で文化的な最低限度の生活を送ることを実現するように動いているのか疑うケースがままある 本書で例示された熊本県の老夫婦と孫世帯のケースは、苦学する孫の収入が規定額を超えたからと生活保護を打ち切った この仕打ちに対する訴訟は、一審で原告勝訴となったものの国と県は控訴した
お金は必要なところに必要なだけ回るのが一番いい、しかし、偏在する。
『ママの銀行預金』(キャスリン•フォーブス著)という短い小説がある 本当は銀行預金などなかったのだが、家計が苦しくてもそれを子どもに気取られないようにしていた母親の話だ それは虚構の心あたたまるお話だ
子どもを不安にさせないで育てられる国にしようと思えばやり方はある もっと福祉と教育に税金を使えばいい 福祉と教育の現場の職員が国民の幸福追求権を後押しすればいい
この小説の母親のように作り話でなく、困っても支え合う制度があるから大丈夫、と言える社会なら、大人も子どもも、職のある人も(一時的にせよ)ない人も、安心して生きていける
現状では、本書を読んだり『死なないノウハウ』(雨宮処凛著)を読んだり、「フミダン」を検索してなんとか生きのびなくてはならない
外国人や外国にルーツのある人々の置かれた境遇は、さらに過酷なものだ
本書は、困っている人の灯火にもなるし、自分が気づかずにいた社会の綻びを知るてがかりにもなる
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